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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介


小売業者は、大型店であれ家族経営の小規模店であれ、早急な自己改革を強いられている。そんななかで勝者となっているのは、例えば5年後に予定していたオンライン販売戦略を、今日の時点で実行に移すすべを見つけ出した企業だ。

「トリーバーチ」もそのひとつである。ターゲットを変え、実店舗を賄う費用をオンライン販売用に回した。作戦を実行する舞台となったのは中国、中東、そして日本。パンデミック以前、日本には310億ドル規模の高級品市場がありながら、オンライン購入はほとんど存在感がなかった。高級品を購入する際は、実際の見栄えや手触り、香りを確認してからクレジットカードを取り出したいという人が多かったのだ。

個別にビデオ来店予約をして、店舗内を見て回れる「バーチャルスタイリング」も導入した。得意客になると、さらに上の扱いを受ける。8月末、バーチは35人の上顧客を招き、ブランドについて意見を聞くZOOM会議を開催した。

数字は、ある程度の希望を抱かせてくれる。「トリーバーチ」の米国内での直接販売は、4月は前年比67%減で、5月には41%減となった。これらの同じ数字は、バーチとルーセルが嵐を切り抜けたことも示している。8月には前年比減がわずか4%になっていたのだ。今年全体の収益は約20%減の12億ドル程度になると予測する。

現在の「トリーバーチ」が黒字か否かについては、バーチもルーセルも語ろうとしない。ルーセルによると、同社は「それなりの負債」を抱えているという。同社の売り上げの減少と、上場している競合各社の評価額が下がっていることを鑑みると、バーチが保有する自社株28.3%の価値は、19年の8億ドルから5億ドルに引き下がったはずだ。とはいえ、不動産などを含む総資産額は推定7億5000万ドル。フォーブスの「米国で最も裕福な叩き上げの女性富豪ランキング」では26位に入っている。

バーチの事業は存続しており、彼女とルーセルは長期的に見て、先見の明のある判断を下してきた。将来的な社会経済活動の停止措置にしっかりと備え、供給網も臨機応変に変えていくつもりだという。

パンデミックは、アパレル全体においてカジュアル志向を加速させている。バーチはそれでも、女性は困難な時代にドレスアップして喜びを味わいたいものだと考えている。ルーセルも、こう付け加える。

「うちにはアイコニックな投資商品がある。買っておけばいつか身に着けられる、タイムレスな商品です。危機から抜け出す秘策は、これでしょうね」。


トリー・バーチ◎1966年、米ペンシルベニア州生まれ。2004年に自身の名を冠したアメリカンライフスタイルブランド「トリーバーチ」を創設。「ダブルT」のロゴをあしらったシューズなどが人気を博し、世界で300店舗以上を展開するグローバルブランドに成長。今年10月に米フォーブス誌が発表した「米国で最も裕福な叩き上げの女性富豪ランキング」では26位にランクインを果たす。

文=デニズ・サム 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=木村理恵

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