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2021.01.04

新年に改めて考える パンデミックに直面する世界の「グレート・リセット」

いまこそ、グレート・リセットの時(Photo by Unsplash)

新型コロナウイルス感染症の発生が確認されてから1年あまり。未曾有の状況下で始まる新しい年に際し、改めてパンデミックについて考えるべきかもしれません。世界経済フォーラムのアジェンダからご紹介します。


・クラウス・シュワブ教授は、私たちが迅速かつ協力して行動すれば、この危機からより良い世界を取り戻すことができると述べています。
・新型コロナウイルス感染拡大の対応に見た変化は、私たちの経済的・社会的基盤のリセットが可能であることを証明しています。
・これは、ステークホルダー資本主義を推し進める機会でもある事を示唆します。

新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンが緩和される中、世界の社会的・経済的見通しに対する不安は強まるばかりです。景気の急激な悪化はすでに始まっており、1930年代以来の最悪の不況に直面する可能性があります。しかし可能性はあるものの、回避できないものではありません。

より良い成果をもたらすには、教育から社会契約や仕事に至るまで、私たちの社会と経済のあらゆる側面を刷新するために、世界は共同で迅速に行動しなければなりません。米国から中国までのすべての国が参加し、石油やガス、ハイテク産業まで、すべての産業を変革する必要があります。私たちに今必要なのは、資本主義の「グレート・リセット」なのです。

「グレート・リセット」を追求すべき理由はいくつもありますが、最も差し迫った深刻な理由は、言うまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大です。何十万もの死を招いたこのパンデミックは、近年の世界史上最悪の公衆衛生危機となりました。そして世界の世界の多くの地域で犠牲者は増え続けており、パンデミックはまだ終わったわけではありません。

危機により際立った問題と新たな習慣


このことは、経済成長、公的債務、雇用、人間の幸福に深刻な長期的影響を及ぼします。ファイナンシャルタイムズ紙によると、世界の債務は平時での最高水準にまで急増しています。さらに、多くの国で失業が急増しています。

例えば米国では、3月中旬以降、4人に1人の労働者が失業申請をしており、週次の新規失業申請件数は歴史的な高水準をはるかに上回っています。国際通貨基金(IMF)は、今年の世界経済は3%縮小すると予想しています。

さらに、既存の気候や社会課題は悪化するでしょう。新型コロナウイルス感染拡大の危機を、環境保護対策縮小への口実にする動きも見られます。また格差の拡大といった社会問題に対する不満(米国の億万長者の富の合計は危機の間に増加しています)は、ますます強まっている。

こうした危機を放置する事は、新型コロナウイルス感染拡大の危機とともに、さらなる危機を生み、世界は持続可能性、平等性、そしてより脆弱性をさらに低下させることになるでしょう。徐々に進める措置やその場しのぎの修正では、このシナリオを防ぐのには十分ではありません。私たちは、経済・社会システムのためのまったく新しい基盤を構築しなければならないのです。

必要とされる協力と野心は、前例のないものです。しかし、それは不可能な夢ではありません。

実際、パンデミックは、私たちのライフスタイルをいかに早く根本的に変えることができるかを示してくれました。ほぼ瞬時に、この危機は企業、個人共に、長い間不可欠とされてきた飛行機での頻繁な移動やオフィスでの仕事などの習慣を放棄させたのです。
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文=Klaus Schwab, Founder and Executive Chairman, World Economic Forum

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