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例えば、2016年4月、カンパニー制を導入し、それまでの機能軸の組織から製品軸のカンパニー制へと大きく舵を切った。2018年1月には、いま触れたように、「7人の侍」と呼ぶマネジメントチームを編成した。コロナ禍の真っただ中の2020年4月には、副社長職を廃止して執行役員に一本化した。

ちなみに、副社長職廃止と同時に、章男は副社長だった小林を〝番頭〟、河合を〝おやじ〟と命名した。

さらに、3カ月後の同年7月には、執行役員の数をこれまでの23人から半分以下に減らした。社長の章男の下には同格の執行役員9人が並ぶ。その執行役員が、「いまのトヨタの責任者は私1人」という社長の章男とダイレクトにつながり、21年1月1日以降トップの決断を支える構図である。

「大事なのは、トップをきちんと理解することです」と、小林はいうのだ。

いってみれば、1月1日付の役員人事は、次の経営人材を育成し、次世代にタスキをつなぐ狙いが込められているのだ。実践を通じてチーフオフィサーの役割を果たせる人材の育成を目指し、適材適所で配置を行うのが目的である。

これまで進めてきた経営改革の総仕上げといえる。

 アフターコロナに章男が求める新経営


新執行役員に章男が求めるのは、アフターコロナにおける経営の「ジャスト・イン・タイム」だ。

よく知られているように、トヨタ自動車創業者の豊田喜一郎が導入した「ジャスト・イン・タイム」は、必要なものを必要なときに必要な量だけ現場に供給し、在庫や停滞を極限まで削減しようとする考え方である。キーワードは、リードタイムだ。章男は、寿司屋を例に次のように説明している。

「注文が入ってから、その材料を取り出して、切って、段取りして、握って出す。前もってつくっていないのに、注文を受けて、さっと出せるのは、リードタイムを短くしているからですね」

章男のいう、自動車業界が直面する「100年に一度の大変革期」を乗り切るには、これまで以上に経営のリードタイムを短縮する必要がある。とりわけ、進化のスピードが速いソフト時代に対応するには、リードタイムの短縮は必須だ。機能間の調整に時間を使ってはいられない。

「日々思っていることを、日々改善できるよう、リードタイムを短くすることを考えていかなければいけない」と、章男は語っている。

指摘するまでもなく、生産の現場では、リードタイムの短縮に向けて、日々ムダな作業や工程をなくすための改善活動が行われている。ところが、経営の現場は、お世辞にもリードタイムが短いとはいえない。例えば、意思決定に停滞やムダが少なくない。

「そもそも副社長という役職をなくしたのも、改善のスピードを上げるためだ」と、章男自ら説明している。

文=片山修

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