MITメディアラボでの実験を手始めに、インドのグラビキイ・ラボは、二酸化炭素排出ガスをリサイクルしてインクを生産しています。現在は、その技術を活用し、包装材や新素材に転化させる方法を探究しています。
4. 深刻な問題のある廃棄物をも、価値あるものに変える
「廃棄物」という概念は、自然界には存在しません。例えば、枯れ葉や動物の糞は、新たに生まれた生命に不可欠なエネルギー源となります。革新的な企業は、問題のある使用済み「廃棄物」をどのように対処できるかを考察しています。
イスラエルのホームバイオガス社は、生ゴミ、屎尿などの家庭から出る廃棄物を、貴重な肥料や調理用のクリーン燃料に転換して、廃棄物を低減し、経費を抑え、低質燃料が原因となる死亡事故を防止しています。
年間15億本のタイヤが使用済みとなり、その大半は焼却処分となったり、埋め立て地に送られたりしています。米エコール社は、無駄の出ない製造プロセスにより、廃タイヤを新製品に転換しています。紙やプラスチックと同様に、ゴムは劣化することなく継続してリサイクルできるため、タイヤを利用した製品は、無期限に再生することができます。
自然をモデルに協調したソリューションを
自然からヒントを得たソリューションには、確実に希望があります。それは、私たちの社会、経済、地球全体に利益をもたらします。
さらに、そのソリューションに、自然、テクノロジー、人間の創意工夫を組み合わせれば、活力ある地球を保護し、平等を促進しながら、世界の成長を促せることでしょう。
地球は、このようなソリューションが、他者と連携せずには実現できないことも教えています。自然界と同様に、私たちは、サーキュラー・エコノミーの中で協調して機能するビジネスソリューションというエコシステムを必要としています。
プラスチックを例に挙げると、複数の企業が数10億ドルを出資して、プラスチックの廃棄物処理に取り組んでいることが話題になっています。包装用の新しいバイオ素材を開発する場合は、使用済の包装材を回収する収集システムやロジスティクスが必要になります。そのようなバイオ素材と他素材を確実に分けられるリサイクリング基盤も必要となります。
また、この循環する資源から新しい商品を作り出す、製品デザインや製造設備が必要となります。米投資会社クローズド・ループ・パートナーズの「ビヨンド・ザ・バッグ・チャレンジ 」や世界経済フォーラムの「ミッション・ポッシブル・プラットホーム」などのバリューチェーン全体を視野に入れたイニシアティブは、システム全体に作用する、リニア型経済システムのエンドツーエンドの問題に、あらゆる部門のパートナーがどのように関与できるのかを示す一例です。
最後に、私たちは、循環型システムに価値を見出し、それを求める、消費者、イノベーター、投資家、政策立案者などを必要としています。私たち全員が協力し、より明るく豊かな未来の実現野ために尽力してはじめて、バランスを保つことができます。それは自然界の法則とまったく同じなのです。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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