自然界に学ぶ4つの教訓
答えは、私たちの周りにあります。自然界は、バランスを保ちながら再生し、成長し、消費しています。
米ナショナルジオグラフィックのエクスプローラー・イン・レジデンスであるエンリック・サラ博士は、その著書「ザ・ネイチャー・オブ・ネイチャー」で、「人間以外の生態系では、すべてのものが再利用、または、別の目的で再び用いられています。自然界は、理想的なサーキュラー・エコノミーの仕組みを実現しており、あらゆるものがその寿命を終えた後に他の何かの源となっているのです」と説明しています。
自然界から4つの教訓を詳しく学んでいきましょう。この教訓は、サーキュラー・エコノミーのビジネスモデルやソリューションにすでに活かされています。
1. 更新と再生
自然界における、サーキュラー・エコノミーの典型的な例は、資源の循環です。つまり、水、炭素、ミネラルなどの資源を新しいシステムや既存のシステムに戻すことです。
ファストファッション業界は廃棄物問題への取り組みに奮闘しています。現在、使用後にリサイクルされる衣類は1%未満で、年間5000億ドル以上の衣類が廃棄されています。
革新的な繊維素材を開発する米エバニュー社は、「元の繊維分子を新しく高性能な再生可能繊維に転化させる、再重合」を活用した「ニューサイクル(NuCycl)」技術を用いて、廃棄物の解消に取り組んでいます。つまり、古い衣料は分子レベルに分解され、何度でも新しい素材として再生されるのです。
もうひとつの例は、米カンブリアン・イノベーション社による取り組みです。同社は、微生物や電極の相互作用から発電する技術に基づく、バイオ電気化学技術により、廃水を浄化するとともに、エネルギーを生成しています。
2. 保護と寿命延長
長年の研究により、植物や動物には自らを守り、環境をも保護する能力があることが分かっています。
蚕の研究により、米モリ社は、食品が腐敗する主な要因の発現を防ぐと同時に、保護層を開発しました。これにより食品パッケージを減らし、食品の貯蔵寿命を2倍に延ばすことに成功しました。
生産される食品のおよそ3分の1が無駄になったり、廃棄されたりしており、その額は、年間約1兆ドルにも上っています。このように、食品ロスの削減に取り組むための膨大なチャンスが存在しています。
3. 薄い空気から価値を創出する
自然の生態系において、空気は重要な役割を果たしており、革新的な企業は、空気がいかに新しい価値の創出源となるのかについて注目し始めています。
世界経済フォーラム、テクノロジー・パイオニアである米エア・プロテイン社は、空気中に存在する元素(二酸化炭素、酸素、窒素などの)を利用し、代替肉のタンパク質に変えることで、農業を変革しています。