新型コロナワクチンをどう普及すべきか? 安全で効果的な5つのステップ

実用化に向けた対策は?(Getty Images)


3. 温度管理と危険物のためのサプライチェーンの準備


ワクチンによっては、-70℃程度の超低温での貯蔵が必要と言われています。温度管理された施設でワクチンを優先的に保管できるよう手配するか、場合によっては、すぐにでもそういった施設をつくる必要があります。輸送中にドライアイスが必要になるとすれば、特別な危険物取扱手順も求められます。

航空機メーカーも、自社のガイダンスを早急に更新し、対応しなければなりません。航空会社も、安全リスク評価の実施が求められるでしょう。サプライチェーンの安全性を確保するために、RFIDやGPSデータロガーの使用を予定しているワクチンメーカーや輸送業者は、事前にサプライチェーンパートナーとともに、これらのデバイスを承認しておく必要があります。

政府は、輸送業者が出荷できなくなる事態を避けるため、ワクチン輸送業者に向け、遺伝子組み換え生物の分類(UN3245)への準拠などの要件に備えるためのガイダンスを公開する必要があります。可能であれば、出荷ごとに個別に承認を行うのではなく、監査プロセスが導入されることが理想です。

4. 緊急時の国境における対策


貿易に関する規定も、合理化・標準化しておく必要があります。パンデミック(世界的大流行)の初期段階において、スムーズな国境通過のために、電子記録や電子決済、デジタルリスク管理プロセスがいかに重要であるかが明らかとなりました。国境管理当局は、電子予備申告データを活用し、サプライチェーン事業者とのやり取りをスピーディーな電子手続きで行うようにしなければなりません。

新型コロナウイルス感染症ワクチンの出荷は、非常に急を要するため、その必要性を宣言し、輸出制限の免除、国境到着前の通関手続き、輸入税の免除などの措置が取られるべきでしょう。そして、同じ基準(WCO)に従ったデータセットが、輸出入双方の通関で機能するようにする必要があります。

特に、熱に弱いワクチンの性質を考慮し、物理的な検査はリスクを踏まえた上で、エンドユーザーの施設など適切な保管施設でのみ行うこととしなければなりません。ワクチンの安全な輸送には温度管理されたコンテナのような特別な輸送機器が必要なことを考慮すると、輸送マニフェストを設けて輸出入での通関手続きを廃し、一時入国・出国による関税や保税・保証の要件も免除が必要となります。

5. ステークホルダー間の協力を確保する


これは、通常の業務以上に、非常に多くの期待を背負ったオペレーションです。さまざまな課題に対し、規制当局と民間企業(特に製薬業と物流業)の協力による、緊急的な対処が必要です。

その一助となるために、世界経済フォーラムは、信頼できる情報の拡散、ワクチンの信頼度向上、普及における課題への対処などを含むアクションに協力してくれるリーダーが集結する場を提供することで、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種の支援を行っています。

例えば、先日、貿易円滑化のためのグローバル・アライアンスは、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国による、新型コロナウイルス感染症ワクチンと関連医療機器の輸入に向けた準備状況を確認するため、米国ASEANビジネス協議会と提携関係を結びました。

これらを含む、多くのパートナーシップがあってこそ、新型コロナウイルス感染症ワクチンの世界的な流通が、最大限スムーズに行われるための準備を整えることができるのです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
過去記事はこちら>>

文=Carlos Grau Tanner, Director-General, Global Express Association;Sean Doherty, Head, International Trade and Investment, World Economic Forum

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事