「すべて僕らの意思」で。End of the Worldの新しいグローバル戦略

Fukase(写真右)とクリエイティブ・ディレクターの和田直希(同左)


「アレクサ、カメレオンを起こして」


「アルバムは7年、和田さんとのチームも2年半くらいかけている。世界でと思った瞬間から、海外、国内は同じチームであるべきではないと思っていたので。ただ、今日明日で何かできるわけではないので、計画を立てながら、実働しはじめたのが最近。僕らは海外ではまだ名が売れていないアーティストで、フットワークが軽いこと以外、ストロングポイントがない。和田さんと最少人数で、とにかくスピードを重要視しました」
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Fukaseがそう話すように、End of the WorldとLANDはアルバム1作目の世界リリースに向けて、Amazonとともにさまざまな取り組みを行ってきた。そのひとつが以下のプロジェクトだ。

「アレクサ、カメレオンを起こして」。リビングや部屋の中で、アマゾンの音声サービスAmazon Alexaにそう話しかけると、FukaseをはじめとしたEnd of the Worldのメンバーたち一人ひとりのトークと、楽曲が流れてくる。アルバム発売に向けたカウントダウン企画のコンテンツ配信として、発売前の1カ月間、毎週、メンバーひとりずつが登場した。

また、CD販売については、アマゾンサイトでの限定事前予約発売として、メンバー直筆サイン入りのメガジャケット(部屋に飾ったり、手元に置いて眺めたりできる大きなサイズ)の購入特典をつけた。さらに、Amazon Musicやゲーム動画配信サービス「Twitch」を通じて、世界中誰でも視聴できる無料配信ライブも開催した。冒頭のニューヨーク・タイムズスクエアの広告もその連携のひとつだ。和田はビジネス構築をしていく過程であらためて、アーティストとしてのFukaseの力を実感したという。
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「ビジネスとクリエイティブが分けられる時代ではないが、それらを超えて本当に人の心に届くものをつくるFukaseの『マジック』はすごい。僕が7割をつくり、最後に120%にするのはFukase。(起業家の)僕が全部決めたら『カマルク』、(アーティストの)Fukaseが全部決めたら『SEKAI NO OWARI』になる。その絶妙のバランスがLANDである意味だと思います」

ストリーミング配信全盛期で、音楽の聴かれ方が1曲ごとプレイリスト中心になるなか、アルバムという形にこだわり、世界に売る・届ける理由や方法について、Fukaseは次のように話す。

「僕も、すごく悩んで考えたりした部分ですが、アナライズ(分析)されているものは一瞬でも過去の話なわけじゃないですか。いまこの瞬間ではなく。だからアーティストとしてそういうことはしてはいけない。いま売れている曲を分析して作ることは過去だから。僕たちは新しいところに進んでいかないといけない。それも、自分たちらしさでやっていかないと夢もないねと。つくりたくない楽曲で売れるのが一番苦しく、『すごくいいいアルバムができたね』という作品で売れないと立ち止まってしまうだろうとメンバーで話をしていました」

「例えば、1曲のプレイリストの時代だと言っても、アルバムがこの世からなくなることはない気がしていて。曲を好きになるのはプレイリストで十分ですけど、人を好きになるにはやっぱりアルバムが必要。僕らは自分たちの生きてきた『生き様』を聴かせたかったのでアルバムである必要がありました。人間が根幹で求めているものは未来永劫変わらないのではないか、という気持ちがあるから、あえていまの時代から逆行していくところをやっています。いまはその方が逆に新しいというか。本当によくて、人の生活に根付いたものは、必ず戻ってくると思っています」
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文=フォーブスジャパン編集部 写真=ヤン・ブース

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