2. Pause
2つ目の方法は、会話に沈黙を取り入れることだ。会話に間を持たせることで、自分の感情だけでなく、相手の感情にも気が付きやすくなる。
自分の感情の場合、相手との対話の中で生まれた感情をそのまま言葉にするのではなく、数秒おいてから発言するように心がける。
特に怒りの感情の場合、一時的な感情が先行してしまい、自分が本当に感じていることと発言したことが一致していない、といった経験がある方も多いのではないだろうか。発言する前に一呼吸おくことで、自分の本当の感情に意識を向けられる。
また、数秒の間をつくることで、表情やジェスチャーからより相手の感情を理解するヒントを得られることが多い。特に表情については、言葉にしていない本音が通常0.5~4秒ほど表情に現れると言われており、眉の動きや口角にも注目してみてほしい。
3. Increase your contact with “outsiders”
ここまで紹介したJournal、Pauseは日常に個人で実施しやすい方法と言えるが、継続には相応の努力が必要となる。次にお伝えする3つ目の方法は、自分が属する環境を変える、つまりシンプルに自分と異なる生活様式や文化を持った社会環境で過ごすというものである。
アメリカの工業デザイナーであるPatricia Mooreは、見た目が美しいデザインの数々が年を重ねた人たちの使い勝手を考えているかどうかに疑問を持ち、26歳から3年間老婦人に変身して老人社会に“潜入”した。
この経験から、彼女は自分がなに不自由なく暮らしていた生活が、高齢者にとってはいかに危険で恐怖が潜んでいるかを実感したそうだ。
老婦人に変身したPatricia Moore(出典)
これは実際のデザインリサーチの例であるが、簡単に実施出来ることとしては、親や兄弟のコミュニティに入れてもらう、関わったことのない業界のオンライン交流会に出てみる、などがいいだろう。
ここで注意すべきなのは、相手を判断する(Define)という姿勢ではなく、新しい社会環境の人々と同じ視点で物事を見る姿勢を獲得することだ。
せっかく異なる社会環境に身を置いても、元の環境と同じ視点や姿勢のままで過ごし振る舞うだけでは、相手の感情を知るだけの感情共鳴(Sympathy)に留まってしまう。視点ごと相手に揃え、感情移入してこそ共感が生まれる。
自分のバックグラウンドと離れた環境で過ごす時間が長い人ほど、偏見や決めつけが少ないというリサーチもあるように、正しい姿勢を意識することで共感に重要な「答えは分かりきっていると思わない」「勝手に判断しない」といったマインドセットを身につけることができる。
btraxデザイン思考研修資料より抜粋
まとめ
今回ご紹介した3つの方法を通して、感情の動きに敏感になり、その細かな感情を表現することが鍛えられるだろう。数日で効果を実感できるものではないが、やり続ければ必ず成果は出る。今日から習慣化すれば、数カ月後のデザインリサーチでは、今までよりも一歩先の共感ができるようになっているはずだ。
※この記事は、btraxのブログFreshtraxから転載・編集されたものです。
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