「被写体の熱を検知するサーマルカメラは、次世代のエアバッグの役割を果たす」と、同社のCEOのヤコブ・シャハラバニ(Yakov Shaharabani)は話す。
全ての人やモノは遠赤外線という目に見えない光を発しており、サーマルカメラにはその遠赤外線を検出するセンサーが搭載されている。遠赤外線は、温度が高くなるほどそのエネルギーが強くなる特徴があり、サーマルカメラのセンサーは遠赤外線の強弱を検知することで、温度を計測する。
Adaskyのサーマルカメラは0.05℃という小さな熱の差を検出可能で、シャハラバニによると夜間や悪天候の下でも最大300メートル先の物体を検出できるという。
「今後の10年間で、歩行者の交通死亡事故件数を大きく減らそうとした場合、必要なのは、歩行者の検知システムの強化だ」と、シャハラバニは話す。しかし、現在の自動運転車に搭載されているレーダーやライダー、カメラなどのセンサーは一般的に、悪天候の夜間や霧などの条件下では、歩行者や自転車に乗った人を十分な精度で検知できないという。
「それを可能にするのが、Adaskyのサーマルカメラだ」と話すシャハラバニによると、同社のプロダクトは単独で使用するものではなく、他のセンサーと組み合わせて使用するものだが、自動運転車やADAS車両に必須の役割を果たすという。「当社のサーマルカメラは、他のセンサーでは解決不可能な課題を解決する」
Adaskyは今年10月、既存出資元の京セラや韓国のOEM企業のソンウ・ハイテック(Sungwoo-Hitech Co.)らが参加したシリーズBラウンドで、1500万ドル(約15億7000万円)を調達したと発表した。
同社は新たに調達した資金で、イスラエルの製造拠点を拡大しようとしている。「当社が現在直面している課題は、需要を満たすための製造キャパシティの確保だ」とシャハラバニは話した。
シャハラバニは具体的な顧客名は明かさないが、Adaskyは既に数社の自動車メーカーから受注を受けており、2023年か2024年には同社のサーマルカメラを搭載した車両の製造が始まる見通しという。「当社は今後、サーマルカメラを用いた革新的な安全システムを普及させていく」と、元イスラエル空軍のパイロットのシャハラバニは語った。