キーストーンXLパイプラインが最初に提案されてからすでに12年が経過したが、多くの人々は、パイプラインを所有するカナダのエネルギー大手トランスカナダが開通を予測する2023年までに、そもそも必要すらなくなるのではないかと怪しんでいる。
筆者が初めてキーストーンXLパイプラインの記事を書いたのは2013年のこと。タイトルは、「パイプ・ドリームズ:キーストーンXLはどれだけ雇用を創出するか?」というものだった。
当時の米国経済は、依然として2008年大不況からの長く苦しい回復途上にあり、潜在雇用の創出はきわめて重要だった。筆者はトランス・アラスカ・パイプラインを例に挙げながら、パイプラインプロジェクトに関連する直接雇用、付随雇用、副次雇用の実数を推定するのはきわめて難しいこと、また巨大パイプラインプロジェクトは何年にもわたって地域経済に想定外の影響を与える可能性があることを指摘した。
しかし、パイプライン推進派が主張する雇用創出の数値がたとえ過大評価だとしても、石油パイプラインには、(ほかのエネルギー輸送手段と比べた場合の相対的な)安全性や、国家と地域のエネルギー安全保障など、多くのメリットがあることに変わりはない。
オバマ大統領2期目の最初から最後まで、パイプラインをめぐる議論は続いた。争点は、カナダのタールサンド地域やノースダコタ州のシェールオイル産出地域から米国のメキシコ湾岸まで石油を運ぶこのパイプラインのメリットが、環境への潜在的な悪影響を上回るかどうかにあった。オバマ政権は2015年11月、このパイプラインが米国の国益にかなうものではないと判断し、建設計画を却下した。
しかし、キーストーンXLパイプラインへの関心は、2016年の大統領選のあいだに再燃した。トランプ大統領が2017年に、パイプライン計画を加速させる大統領令に署名したあと、筆者は再びこの話題をとりあげた。それは、「キーストーンXLパイプラインはこれだけの雇用を生み出す」と題した記事で、この大統領令はキーストーンXLパイプラインの建設を進めることを意図したものだと説明した。その後、トランスカナダはパイプライン建設計画を再び申請。数カ月後の2017年3月、米国務省はこのパイプラインが米国の国益にかなうものであると認め、申請を承認した。