「メード・イン・チャイナ」は終わりに向かっているのか?

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アップルは7月にある重大な発表を行なったものの、世間の注目度は比較的低かった。その発表とは、iPhoneで当時の最新モデルだった「11」の製造拠点を中国からインド・チェンナイへ移行するというものだった。

その数週間後、サムスン電子やフォックスコン、ペガトロン、ウィストロンといったアップルのサプライヤー、インド製造企業のマイクロマックスとラバ、そしてさらに18社の企業が、インド政府が電子機器製造の大規模生産を推奨するために立ち上げた「生産連動型インセンティブ(PLI)」スキームの申請を行った。同スキームへの参加により、これら企業は製造拠点の多くをインドへ移すことになる。

同スキームに参加することで、インドへ輸出する電子製品に対する20%の課税を回避できる。量的にみれば世界で最も重要な市場の一つであるインドは最近、保護的な貿易政策を強化してきた。また今回の動きは、中国における製造コストの上昇と製造の機械化、それに伴う労働力依存の低下に関連した、より深いマクロ経済的な問題を反映している。

同時に、米国のバイデン次期政権は中国に対し、国内市場を世界に向けて開いて競争を受け入れ、自国民の人権を尊重するよう圧力をかけ続け、同盟国にも同調するよう働きかけるだろう。アップルが製造拠点の一部を中国の隣国であるベトナムへ移転した際には、同国の地方部に経済効果が生まれた。

私たちは今、景気循環の変化を目にしているのだろうか? 中国は20世紀後半、「メード・イン・チャイナ」から「エンジニアード・イン・チャイナ」への転換を目指し始めた。格安で製造をアウトソースできる“世界の工場”としての役割から脱却し、最先端技術の供給源になろうとしたのだ。同時に中国企業は自動化を進め、一部企業では労働者の8割近くがロボットに置き換えられた。機械のメンテナンスや機械学習の専門職など、製造ラインに関わる高い専門性を持つ従業員は高賃金を得ることになる。工場の機械化によって生産性が高まり、間違いや事故が減るため、人件費はもはや重要ではなくなる。

家電業界にとって、中国にとどまることは、主にサプライヤーと近い距離を維持するという点でメリットがある。しかし、こうした企業のグローバル化が進み、世界各地でサービスを提供し、問題解決ができるようになっている。そうなると、生産拠点は移転を迫られるかもしれない。

人件費が問題ではなくなり、機械化や製造拠点の移転が進むと、欧米企業は自国での制裁や経済封鎖を避け、自社の製品を設計し消費する国々へと価値を近づけるため、中国に対する圧力を強めるようになるだろうか? もしそうなるのなら、それはいつのことになるだろう?

編集=遠藤宗生

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