IDEOが中高生に「デザインの力」を本気で伝えたい理由

2019年夏にIDEO Tokyoで開催したd.campの様子


なぜそこまでデザインする力を身近に感じてもらいたいか。それは、デザインする力が“スーパーパワー”だからだ。

理由は2つある。まず、何かを作れるようになると、世界のあらゆるものごとに対して、「自分だったらこう作るのに」と考えられるようになる。その「目」で世界を見られるようになると、世の中が完璧からは程遠いという事実に気付き、その改善案を常に頭の中で模索し続けるようになる。

どうしてこの建物はここに段差を作ってしまったのだろう? この機械はなぜこんなところにボタンを配置したのだろう? ……意外にも、この世界にあるものは、そこまで使い手に想いを馳せて作られてないのだ。

スーパーパワーたるもう一つの理由は、周りの大切な人たちへ還元できることである。IDEOのメンバーの多くは、何か新しいモノやツールが必要になったとき、まず、「どうしたら自分で作れるだろう?」と考える。かくいう僕も、妻がフリーランスになった際にはウェブサイトを作ったし、コロナ対策として手洗いをより浸透させるために、それを楽しめるように手洗いDJアプリを作ったりした。

そうして何かを作り出せるようになると、自分や、自分の大切な人の困りごとが、自分の手で少しだけでも改善できるかもしれない、という希望に変わる。それがデザインの力だ。


新たなアプリのアイディアを発表するキャンパー達

総クリエイティブ・コンフィデンス時代を目指して


このスーパーパワーは、心理学で言うSelf Efficacy(自己効力感)であり、それをケリー兄弟がIDEO流に翻訳したものが「クリエイティブ・コンフィデンス」だ。僕たちIDEOのメンバーは、このクリエイティブ・コンフィデンスを拡張していく長い旅路の真っ只中にあるように思う。

自分の周囲10m範囲の困りごとに対してポジティブな変化を起こせる人は、その影響範囲を100m、1km、100kmと広げていくことができる。VUCAと呼ばれるこの時代、さらにはパンデミックの先行きが見えない中では、このクリエイティブ・コンフィデンスを華麗に使いこなし、主体的に動ける人たちが一人でも多く必要である。

その一歩目を踏み出すことをサポートし、かつそれがいかに楽しくて素晴らしいことであるかを知ってもらうことが、d.campの目的であり、ひいてはIDEOという組織の隠れミッションであるように思う。


d.campで教鞭をとる油木田

文= IDEO Tokyo シニア・インタラクション・デザイナー 油木田大祐

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