アートはロックダウンしない SHUN SUDOが記録した『2020』

アーティスト SHUN SUDO

アーティスト SHUN SUDO

激動の2020年が終わろうとしている。新型コロナウイルスで私たちの生活は一変し、年末年始を大切な人と過ごすことすら難しい。

この2020年は、いったいどんな1年だったのだろうか。どんなまとめ記事を読むより、どんなに言葉で語られるより、2020年を直感的に振り返ることができるアート展がある。SHUN SUDO個展「2020」だ。

SHUN SUDOは、日本とニューヨークを行き来しながら制作と発表を続けるアーティスト。2015年に初の個展「PAINT OVER」をニューヨークで開催し、その後、ニューヨークやマイアミで描いた壁画も話題になった。

代表作は、赤やオレンジ、黄色といった鮮やかな色彩とボタンのモチーフがポップな「ボタン・フラワー」。見る人の気持ちを明るくハッピーにさせる彼の世界観に人気が集まり、NIKEやApple、スターバックスなど有名企業とも、次々とコラボレーションしている。

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明るくハッピーな絵を封印。2020年を記録するという責任


世界と日本のアートシーンで注目されるアーティストとなった彼は、2020年もブルックリンのスタジオに滞在して制作を続ける予定だった。

「街に絵を残したい、絵に集中できる環境がほしい」と、壁の持ち主と合意のもとで描く「ミューラル(壁画)」を制作するためニューヨーク行きの準備をしていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、ニューヨークがロックダウンされた。

こうして、SHUN SUDOは、新型コロナによる世界的なパンデミックやBlack lives matterをはじめとする人種問題、そしてアメリカ大統領選挙など、これまでにない経験が詰まった「2020年」をテーマに、東京で個展を開くことを決めた。

「コロナでロックダウンしなかったら、いつも通り友だちとニューヨークで楽しく過ごしていただろう。いつも通り明るくハッピーな絵を描いていたと思う。でも、いま生きているアーティストなら、2020年を記録しておかないといけない。2020年に何を見て何を描いたか、この先、アーティストは問われ続けることになると思うから」

そう話す彼の作品とともに、私たちもこの1年に起きた変化を改めて振り返ってみよう。


世界中に衝撃を与えたNBAプレイヤーの死


作品が並ぶフロアに足を踏み入れると、最初に迎えてくれるのが、今は亡きコービー・ブライアントとその次女ジアンナに哀悼の意を表した「California Love」だ。

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2020年1月、NBA ロサンゼルス・レイカーズのコービー・ブライアントが次女ジアンナとともに飛行機事故で亡くなった。コービー・ブライアントの大ファンであるSHUN SUDOはこの訃報を聴き、「数日泣き続けた」という。愛する人の死と向き合い、SHUN SUDOはこの絵の中で大きな2つの花を咲かせた。色はレイカーズのユニフォームと同じ紫と金色だ。

「葉と茎は靴紐で描いた。ジアンナの背番号『2』、コービーの死で永久欠番となった『8』『24』、そして『LA』が隠されている。片方の花には、バスケットボールとマリブビーチの波も入れた。コービーの哲学であるマンバ・メンタリティ(最高の自分を目指す生き方)の1つに、『人生の意義は無地のキャンバスに色を塗りつぶしていくようなもの』というのがある。彼の愛称がブラック・マンバでもあるので、この絵の背景も黒で塗りつぶした」
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文=鶴岡優子 写真=大本賢児(人物)、西谷圭介(作品) 編集=松崎美和子

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