アートはロックダウンしない SHUN SUDOが記録した『2020』

アーティスト SHUN SUDO


新型コロナウイルスによるロックダウン


海外渡航が制限され都市が封鎖される「ロックダウン」もまた2020年を象徴する言葉だ。出張や海外旅行に行けないだけでなく、日本に残った外国人労働者の生活困窮も問題になっている。国による医療や保障制度の違いも浮き彫りになり、国境と国籍を強く意識した1年だった。

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SHUN SUDO自身の期限が切れたパスポートに描かれたメッセージは「Citizen of Earth」。

「コロナでロックダウンになり、地球の誰もが同じ地にとどまることになった。どの国のパスポートを持っているかということは、一種の差別かもしれない。人種差別の問題を強く意識する1年だったけれど、国籍をなくしてみな地球人でいいんじゃないか、という思いだった」

マスクとソーシャルディスタンス


街を行き交う人の表情はマスクで覆われ、ソーシャルディスタンスで人と人の距離は引き離された。「不要不急」でないイベントや旅行、会食は制限しなくてはならなかった。制限されてみてわかったのは、人は人に会いたいし、街に出たけたい生き物だということ。「密」と「接触」のリスクだけでなく、人の気配を感じ、手で何かに触れるあたたかさを思い知った年でもあった。

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「マスクをしていないと冷たい視線で見られたり、大声で笑ったりおしゃべりもできなかった。でも、お互いは敵ではないし、気持ちと気持ちの距離は近寄せることができる。そんな思いで、ひとりひとりのハートを花にしてみた。花の色は心の表情を表している」

プラスチックごみ問題とエコバック


2020年はプラスチックごみによる環境汚染が大きな問題となり、私たちの生活からプラスチックのストローやレジ袋が姿を消していった。買い物に行くときはエコバックを持ち歩くようになった。しかし、この絵を前にすると疑問が湧いてくる。エコバックは本当にエコだったのだろうか。

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「エコバックは環境問題に目を向けるいいきっかけだった。しかし、製造時にレジ袋の何倍ものプラスチックを使うエコバックもあると聞く。また、繰り返し使うエコバックの衛生面も問題になり、海外ではビニール袋に戻った国もあるようだ。何が正しい情報かわからない中、真実を見極めていくことが大事」

新型コロナウイルスとパンデミック


フロアの奥へ進むと、不気味な静けさを感じる1枚の絵がある。真っ白い空の下、瓦礫が地平線まで続いている世界。瓦礫をよく見ると、手榴弾やミサイルのような兵器が打ち捨てられている。白い沈黙の世界は「見えない」恐怖を表しているのだろうか。

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「新型コロナウイルスと戦い続けてきた2020年。これまで恐怖だと思っていたどんな兵器より、人々を震撼させたのは見えない敵だった。ただ、そんな世界でもピアノが奏でる音で少しでも癒されたり、平和な世界へと向かってほしい」
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文=鶴岡優子 写真=大本賢児(人物)、西谷圭介(作品) 編集=松崎美和子

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