中国で急増するキリスト教徒 共産党監視下なのになぜ?

中国でキリスト教徒が増えている。写真は、浙江省温州市の教会のクリスマスイブの様子だ(Getty Images)


現在、中国では教会が存続するためには、この時に政府が許可した指導団体(中国基督教三自愛国運動委員会など)の傘下に入り、政府に提案した方針(三自)に基づいて教会運営を行わなければならない。

急増する信者 一体、なぜ?


中国政府の研究機関「中国社会科学院」が発表した宗教白書によると、2010年の中国のキリスト教会の数は55000カ所、キリスト教信者の数は約3000万人である。その内訳はプロテスタントの信者が2300万人強、カトリックが600万人、その他100万人はロシア東方正教会の信者などと発表している。

信者の推移をみると、プロテスタントは共産党政府建国時(1949)が約70万人だったので、61年間で30倍以上に増加したことになる。

一方、海外の研究機関は中国政府の発表した数字は少なすぎる、と指摘する。米国の福音派メディア「クリスチャニティ・トゥデイ」(Christianity Today)は中国の総人口の10%に近い1億3000万人がキリスト教信者だと発表している。また、米国の無党派シンクタンク「ピュー研究所」(Pew Research Center)は6700万人(全人口の5%)だと発表している。

中国政府の発表と海外の発表が異なるのは非公認教会を数に入れているか、入れていないかの違いにある。中国には政府が認めた団体に所属しない、無届けで運営を行っている教会があり、カトリック系教会は「地下教会」、プロテスタント系は「家庭教会」と呼ばれている。最近、これら非公認教会の数が増加している。政府は政府の許可を得ないで活動する宗教を「邪教」とみなしており、引き締めを強めている。

急速な経済成長で変わる「道徳観」


中国のキリスト教徒
中国人の信者にとって、キリスト教はどのような存在なのだろうか(Getty Images)

中国でキリスト教徒が増えている理由はどのようなことからだろうか。

中国共産党機関紙「人民日報」のインターネット版「人民網」(2011年4月25日号)は、その理由について、「中国の改革発展の重要な時期にさしかかっており、価値観や道徳観が大きく変わってきた。(外部の)人間関係からは得られない寛容、慈悲、公正を(教会は)与えてくれる。こうした安心感や帰属感が求められているからだ」と分析している。

また、近年、中国人の留学生が急増していることも理由の一つだ。現在、世界の留学生約500万人強のうち3分の1に相当する170万人が中国人留学生だ。留学先の1位、2位は米国と英国だが、これらの国はいずれもキリスト教国であり、留学先で信仰をもつ学生が増えていると考えられる。

中国の経済成長の繁栄の影で経済格差が生まれ、孤立感をもつ人が増えている。変化した価値観に違和感を抱く人も少なくない。物質の豊かさでは満たされない心の隙間を埋めるものを教会に求めているということだろうか。

連載:中国のライフスタイルと働き方の新常識
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文=廣田壽子

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