中国の総人口14億人のうち、キリスト教徒が約5%を占めている。中国でキリスト教会が公然と活動するには、中国共産党政府が認めた団体に所属し、政府当局に登録しなければならない。政府は教会に対して、教会は、外国の影響力を排除し、中国人によってが教会運営することを要求している。非公認の教会を含めると、総人口のうち約10%に近い1億3000万人に上るという見方もある。
なぜ、いま中国でキリスト教徒が増えているのだろうか。キリスト教のプロテスタントの信者である筆者は、中国滞在中の9年間、上海の教会に出席していた。その体験をふまえて、中国の教会の実情についてレポートする。
上海の教会、ある日曜日。1日の礼拝者数は2000人
上海市の中心部・長寧区にある上海沪西教堂。レンガ色の外壁、正門には金色で教会名が見える。101年の歴史をもち政府に公認されたプロテスタント教会だ。
日曜日の午前8時半。教会の前には9時半から始まる第二回目の礼拝に出席するために信者が並ぶ。やがて、前の時間の礼拝が終わり、門が開けられると、人々がなだれのように出てくる。高齢者が目立つが、中高年や若い人もいる。完全に退出し終わると、第2回目の礼拝に出席する人が堂内に入る。
礼拝室は1階のメイン礼拝室と2階の礼拝室、そして4つの小礼拝室がある。メイン礼拝室の奥には講壇があり、背後には十字架が掲げられている。カメラとマイク、大きなスクリーンが設置され、どこの礼拝室にいても講壇の様子が映し出され、礼拝できるようになっている。
教会の収容人数はメイン礼拝室が約400人、2階席は100~200人、小礼拝室は合わせておよそ150人だ。礼拝開始15分前になると、どの礼拝室もほぼ満室になる。礼拝プログラムは開会の祈り、礼拝者全員による讃美歌斉唱、聖歌隊による特別讃美、聖書購読、牧師の説教、新来会者歓迎など日本のプロテスタント教会とほぼ同じだ。礼拝は中国の共通語である普通語で行われる。
11時半頃礼拝が終了。感慨深く満足そうに席を立つ人々。出口のところで献金箱にお金を投げ入れて教会を後にする。
礼拝時間は毎週日曜日の朝7時半、9時半、夜7時から。3回の礼拝者の合計は1800人~2000人になる。日本の教会は礼拝出席者が40~50人のところが多いので、それと比べると想像しがたい数だ。
欧米の中国侵略と同時進行した「キリスト教布教」
中国では文化大革命(1966~1976)中、国内の宗教施設や文化財が破壊焼却された。キリスト教会も閉鎖され、没収された礼拝堂は別の目的で使われ、聖書や讃美歌はことごとく焼却された。文革終結後、文革の誤りを訂正する過程で、1982年に制定された中国の新憲法の中で「宗教の自由」が保障されている(36条)。だが、条文には宗教を利用して社会秩序を乱すことを禁じ、国外の勢力による支配を受けないことが明記されている。
中国では信者が比較的多い宗教にキリスト教以外に仏教、道教、イスラム教などがあるが、共産党政府はキリスト教に対しては政府の監督下においてのみ存続を認めている。