「地方で仕事をつくる」人口2000人の離島で起業した男の葛藤、そして信念

東シナ海の小さな島ブランド(アイランドカンパニー)山下賢太氏


脱・よそ者。地域で必要な人になれば、道がひらける


久しぶりに帰った僕は「異物」であり、半分よそ者のような立場。地域を長く離れていた人間がやりたいということを地域の人がよしとしてくれるはずがありません。

島や田舎では、「〇〇さんちの娘」「〇〇屋の後継ぎ」のように、皆んな「誰かの顔」を借りて生きています。誰かの顔、と言うのはその地域にとっての信用を表しています。

田舎では会社名などの肩書きではなく、関係性の中で生きている。出身者であっても、よそ者であっても、その人が地域にとってどんな存在か理解されることの方が大事なんですよね。

「京都から帰ってきたけんちゃん」から脱却するために僕は、日々を通じ「地域で必要な役割」を生み出していく努力をしてきました。島の人たちの食卓に必要なものを作ろう、という一つの思いが豆腐屋「山下商店のけんちゃん」に繋がりました。

島で必要とされる商品やサービスを作ることで、必要とされる人になっていくこと。そうして次第に理解者や協力者が現れ始めたような気がします。



島の兄ちゃん、「世界で一番暮らしたい集落」への挑戦


島に帰ってこなくてもよかった僕が、ここで頑張って仕事をつくる理由。それは同じように地域で頑張る人や次の世代の子ども達が同じような苦労で「頑張らない」ためだと思っています。

アイランドカンパニーの事業は多種多様で一見、一貫性がないように見えますよね。でも少子高齢化が進み、ますます小さな集落になっていく時代に私たちに関係のないことはありません。たくさんの事業を繋いで線にしていくこと、そしてどう未来へ繋げていくかまで頭を捻っているんです。

「井の中の蛙」という言葉がありますよね。僕らは、自由に場所を行き来することができる時代に生まれ、世界中のどんな街で働くこともできる。僕は世界を知り、この甑島という小さな井戸で地域の人と笑い合っている蛙でありたい。

それをみた誰かが「なんだか楽しそうな井戸だな」って覗き込んだ時、「楽しいからこっち来てみろよ」って胸を張って言える自分でありたいし、そんな地域をつくっていきたい。

事業への大打撃を受けた2020年。島を訪れる人が減り、売り上げも大幅ダウンしました。

こんなときだからこそ、自分の暮らしている小さな井戸で笑い合える関係性を大切にし、誰かに託していた日常の暮らしを「みんなと同じように」ではなく、ここにあるものを大切に「自分たちで考え」創りだしていきたい。そう、決意を新たにしています。


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文=澤雪子

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