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2020.12.21 07:00

「捨てる」ことに躊躇しない。その原点は、高校時代の成功体験にあった


しかし受験の仕方すら分からなかったという。新宿の紀伊國屋書店本店に留学コーナーがあると聞けば、静岡から1人で上京して本を買い漁り、時差があるから夜中にアメリカの大学に電話して情報収集を重ねた。

「どこに受かるか分からないので30校くらい受験しました。無事に留学できたけど、僕の英語力なんて中学1年生で止まっているから全然通用しない。また言語がないわけです。

でも親の都合で否応なしだったのとは違って、アメリカ留学は自分自身で決めたこと。これが僕にとって初めての成功体験であり、自分自身が学校や先生の期待に沿う選択肢を捨て、初めて1人の大人として決断した『最大の出来事』。これが全ての原点になっているように思います。

もし日本の大学に進学していたら、自分は全く違う人間になっているはずです。誰かに与えられたものではなく、自分の決断を通じて自分は変われるんだという勇気と自信──これが僕の根っこになっているんじゃないかな」

働き方のエコシステムを作り上げたい


過去の実績を捨てることに躊躇せず、変わり続けたいと語る南氏は、どのような未来を描いているのだろうか。

「まずはビズリーチとHRMOS(ハーモス)を中心とした、日本の働き方における新しいエコシステムを作りたいと考えています。僕たちは企業と個人が依存関係ではなく、個人が会社を選び、企業がきちんと人材を活用する時代を作りたい。それを支えるような、未来の働き方のエコシステムを作るのが直近の目標です」

企業から見ると、既存の「ビズリーチ」や「キャリトレ」は社外の労働市場をターゲットにしている一方、「HRMOS」は社内の労働市場がターゲットだ。この2つを1つのエコシステム内でつなぎ、データをもとに定量的に企業が人を判断・評価する。そして企業も人を企業を評価していく──。

「まずは日本の人事マネジメントと働き方のエコシステムをつくりたい。このエコシステムをつくり上げられたら、日本はまだまだ捨てたものではないと思うんです。依存ではなく、互いを尊重し鼓舞し合える関係性こそが、日本の働き方の未来であり、日本の未来そのものだと考えています」

さらに長期的には、エコシステムの思想を他の産業にも広げていきたいと南氏は語る。その一環として、ホールディングス傘下の事業継承M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード(ビジョナル・インキュベーションが運営)」は、雇用の流動化とセットで企業の資本も流動化しなければ、生産性が上がらないという思想のもと生まれた。

他にも国内最大級の物流DXプラットフォーム「TRABOX」や、オープンソース脆弱性管理ツール「yamory(ヤモリー)」など、次々と新たな事業を展開している。

「我々の最大の特性は『エコシステムづくり』だと自負しています。長期的にはエコシステムをつくるフレームワークを、他の産業にどんどん横展開して、日本経済を元気にしたいですね」

文=筒井智子

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