米国の「貧困率」が過去最大の増加、非大卒の22%が危機的状況

無償で提供される食事を男性が受け取る様子、ニューヨークにて(Photo by Robert Nickelsberg/Getty Images)

新型コロナウイルスのパンデミックによる打撃で、米国の貧困率は6月の9.3%から11月には11.7%に急増したことが、シカゴ大学とノートルダム大学の研究者らが12月16日に発表したレポートで明かされた。貧困の増加率は、1960年に政府が統計を取り始めて以来、単一の年で最大になったという。

連邦政府は3月に、一人あたり1200ドルの現金給付と失業保険給付の大幅な拡大を含む救済パッケージを提供した。その結果、4月、5月、6月の貧困率は低下した。

しかし、政府はその後、現金給付を打ち切り、いくつかの救済給付も期限切れを迎えたため、貧困率は急上昇した。平均的な失業給付金の額は、5月後半から7月末にかけては週あたり930ドルだったが、8月には330ドルに急減した。

政府が発表する公式の失業率は、6月の11.1%から11月には6.7%に縮小したが、貧困率はこの間も毎月着実に上昇し、合計780万人のアメリカ人が貧困状態に陥っている。

シカゴ大学とノートルダム大学の研究者らは、直近の貧困率を推定するために、米国の国勢調査局が毎月6万世帯を対象に実施する人口動態調査(Current Population Survey: CPS)のデータを参照したという。

レポートでは、黒人や子供たち、学歴が高卒以下の人々が、特に深刻な打撃を受けているとされた。黒人の貧困率は6月から3.1%上昇していた。非大卒の個人の貧困率は、6月の17%から11月には22.1%に上昇していた。さらに、およそ230万人の17歳以下の子供たちが、過去6カ月の間に貧困状態に陥ったという。

12月下旬に追加給付金の期限が切れるため、貧困率は今後も急上昇する可能性がある。CARES法の最後の2つの連邦緊急失業プログラム(通常は失業保険の対象とならない人向けのパンデミック失業支援など)は、12月26日に期限切れとなる。

Century Foundationの調査によると、クリスマスの翌日に給付金を失う米国人は、最大1200万人に及ぶという。一方で、すでに連邦政府の失業給付を使い果たした米国人は400万人を超えている。

500万世帯が家賃未払いで立ち退き要請


ノートルダム大学教授のジェームズ・X・サリバンは「貧困率の上昇を食い止めるためには、2つの方法がある。1つは労働市場の劇的な改善だ。もう1つは連邦政府からの支援だ」と述べた。「状況から考えると、短期的に労働市場が大幅に改善することはありえない」

合衆国保健福祉省(HHS)が定める、2020年の米国の4人家族の貧困ラインは年収2万6200ドル(約270万円)とされている。

一方で、投資銀行スタウトの直近のレポートによると、米国の1400万世帯以上が、立ち退きを迫られる危険にさらされている。米政権はパンデミックの打撃で、家賃を払えず立ち退きに遭う人が急増する状況を回避するため、家賃未払いでの立ち退き要請を、年内は禁止する通達を出した。

しかし、この通達は12月末で失効するため、1月1日以降に約500万世帯が、立ち退きを命じられる見通しだ。

編集=上田裕資

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