具体的には、Sequoia Capitalの主要投資先であるDoorDashおよびAirbnbが上場を果たしたのですが、上場直後から株価が急騰し、金曜日の終値ベースでは時価総額がそれぞれ560億ドル(約5兆8200億円)および830億ドル(約8兆6300億円)にまで達したのです。
偶然にも、どちらの投資もSequoiaのAlfred Lin氏が主担当として進めたものでした。今回の上場によって史上最も成功しているベンチャーキャピタリストとしての評価を確実なものにしたのは明らかですが、驚いたことに、今回が彼にとって初めてのIPOだったそうです。
DoorDashもAirbnbも、投資自体は何年も前のことですが、長年の取り組みの末にようやく伝説級の巨大ホームランとして芽が出たのです。
ベンチャーが長期にわたる積み重ねを経てハイリターンを実現するタイプのビジネスであること、そして世界トップレベルの企業を育てるには長い時間が必要だということを改めて認識させられます。
投資担当者以外では、上場初日に株価が大きく急騰したという点でも両社は似ています。DoorDashは公募価格から85%上昇し、同様にAirbnbの株価は112%上昇しました。相変わらず、IPOでは公募価格が適正な水準に設定されない傾向があり、その裏で既存投資家が不利益を被るといった状況が続いているようです。投資銀行は株式市場の旺盛な投資意欲や、それに関連した動きに気づかないで(あるいは無視して)います。
ただし、DoorDashやAirbnbの場合、主にミレニアル世代などの比較的若い世代の投資家が市場に新しく参入してきたことが今回の急騰につながったと考えられます。近年、Robinhoodなどのシンプルで直感的に使える投資アプリの利用が広がり、若い世代による積極的な投資が増えてきています。こうしたアプリは投資家層の拡大に一役買っているのです。
また、より大きな要因として、どちらの企業もミレニアル世代からの認知度や利用率が高い消費者向けブランドを展開しているという点が挙げられます。米国の証券会社であるTD Ameritradeで主任ストラテジストを務めるJJ Kinahan氏によると、同社の提供する取引プラットフォーム上で売買されたDoorDashとAirbnbの株のうち、それぞれ41%と45%がミレニアル世代の顧客によるものだったそうです。
2020年が良くも悪くもサプライズ続きの年だったことは言うまでもありませんが、今回の上場についても同様です。
4月に世界中で旅行が取り止めになったとき、AirbnbがIPOで成功することを予想できた人はほとんどいなかったでしょう。しかし実際は、売上はまだパンデミック前の水準にまで回復していないものの、企業価値はなんと当時の3倍にまでなりました。
DoorDashも以前は非常に低い利益率でフードデリバリー市場のシェアを争っているような状況でしたが、パンデミックによってこれまでになく大きな追い風を受けました。
コロナ禍においてテック界では他業界とは明らかに違う環境の変化が起きているようですが、今回はその違いが如実に現れた結果と言えるでしょう。
連載:VCのインサイト
過去記事はこちら>>