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2020.12.25

遺伝子解析を日本に。課題は世間との認識のギャップ|ジーンクエスト 高橋祥子#2

ジーンクエスト 高橋祥子


──そのような困難をどのように乗り越えていかれたのでしょうか?

2003年にヒトゲノムが解読されたので、それよりも前に教育を終えられている方は「知らなくて当然」。むしろ問題だったのは、私が世間に対し「遺伝子を理解してる、興味がある」という期待値を押し付けていたことでした。

「なぜわかってくれないんだろう」と思うこと自体が私の押し付けである、と気づいてからは、情報の発信方法も変えるようにしました。

例えばセミナーやメディアでお話しする際も、昔の私は「事実」、例えば「遺伝子解析は大切です」といった内容を淡々と話していました。でもそれでは、そもそも興味の無い人の感情は動きません。

大切なのは事実を伝えるだけではなく「感情の共有」をすること。例えば「遺伝子解析をすることで、皆さんの生活はこう変わるかもしれないんです」といったことを熱意を持って伝える。そうすると、徐々に興味を持ってくださる人が増えてきました。

相手を理解した上で、その人の「感情が動く」ために、自分の感情をどう伝えればいいか。この「感情の共有」の意識によって、徐々に困難を乗り越えることができたと思っています。

「遺伝子解析」で世界の課題を解決する


──「遺伝子解析」の社会に対するインパクトは、これからもますます広がっていきそうですね。

アメリカだと遺伝子解析はかなり普及しており、何千万人もの方が解析サービスを受けています。一方で日本はまだそこまで普及していません。

これには様々な理由がありますが、大前提として遺伝子研究に投じられている研究費がアメリカの方が圧倒的に多いことが挙げられます。研究が進んでいるからこそ、実証されている効能も多く、解析サービスを受ける人が増えるという好循環が生まれているのです。

口で言うだけでは何も始まりません。やはり世の中の意識を変えるのは効能や実績です。

我々が今後も事業を進めて実績を残していくことで、日本における遺伝子研究の推進にも貢献していきたいと考えています。

──では最後に、読者の方にメッセージをお願いいたします。

私はこの「生命科学」の力を使って日本、そして世界が抱える課題を解決していけるよう頑張っていきます。皆さんと一緒に世界を変えてゆけたらと思います。


高橋祥子(たかはし しょうこ)/1988年大阪生まれ。2013年6月、東京大学大学院博士課程在籍中にジーンクエストを設立。2015年3月博士課程修了。2017年10月にユーグレナグループに参画、2018年4月にユーグレナの執行役員に就任。

連載:起業家たちの「頭の中」
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文=城戸大輝 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc.

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