ジル・バイデンの肩書批判に見え隠れする「皮肉と不安感」

ジル・バイデン(Photo by Jeff Fusco/Getty Images)


この論説には、さらなる悪意がみて取れる。女性蔑視、女性が取得した専門家としての資格への尊敬の欠如(職場での男女平等における大きな問題の要因)、マイクロアグレッション(無自覚の差別)といったものがにじみ出ている。

気候変動や新型コロナウイルスについて、インターネット上にはどれだけの誤った情報が出回っているだろうか。それらに容易にアクセスができる現在、専門家とは陳腐化したもの、あるいは敵だと考える人もいるのかもしれない。最近の政治において、バイデン次期大統領は「科学者の話に耳を傾ける」ことで嘲笑されてきた。

このような時代、メディアは専門家を「博士」と呼ぶべきではないだろうか。配管工や弁護士、その他の職業の人たちには、自分が信用を得ていることを証明する方法がある。科学的に誤った情報がウイルスそのもののように拡散している今、科学の専門家たちにも、そういったものが必要だ。

「博士」は自尊心を刺激?


心理学の研究によれば、誰かの成果は、別の誰かを不快にさせる。メンタルヘルスの問題にオンラインで対応するトークスペース(Talkspace)がウェブサイトに掲載した記事によれば、「自分を他者と比較するのは人間の本質的な性質であり、それが嫉妬心や、不快感を引き起こすことがあっても、驚くことではない」。

そして、研究結果によれば、自己肯定感の低い人はより強く、こうした不全感(自分が不完全であるという気持ち)や嫉妬の感情を持ち得るという。これが正しいとすれば、「博士」という肩書が、一部の人の自己肯定感や不全感を刺激する可能性もあるかもしれない。

だが、人を定義するのは「肩書」ではない。その人が、「他者をどのように論じるか」だ。

編集=木内涼子

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