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2020.12.26

ミツバチの減少で企業収益も減る? 生態系の崩壊が意味すること

ミツバチの研究が早急に求められる(Photo by Unsplash)


この研究データによると、ミツバチが熱帯地域よりも砂漠や温帯環境を好むことがわかります。これは、低地の植物や花の方が、樹木よりもミツバチの食料源となるからです。さらに、熱帯地方で個体数がピークを迎えるアリの仲間とは異なり、ミツバチの場合は湿気を好まないという特性があります。研究が示すように、湿気は花粉源にダメージを与えるため、ミツバチの分布を制限する可能性があります。

この研究は、人間の活動がミツバチに与える影響を評価し、ハチの個体数の減少を追跡する上で重要なステップとなります。今後の研究や目標とする保全活動の重要なベースラインとなることが期待されています。

この研究で得た調査結果を基に、科学者や各国政府は、環境の悪化や有害な農法の影響を受けるリスクにさらされている、ミツバチのホットスポットを特定することができます。また、生態系サービスの分析において、受粉サービスの理解を深めることにもつながります。この調査結果は、気候変動、特に降雨パターンの変化が、将来のハチの分布に与える影響を予測する場合にも利用することができます。

低所得国の多くは、養蜂されていない野生のミツバチに作物の受粉を依存しており、その研究はほとんど進んでいません。養蜂家は、ミツバチが減ればその分を注文することができますが、野生のミツバチの減少に対してはそうはいきません。つまり、最も脆弱な人々のための食料安全保障には、こうした未知の種に焦点を当てた研究が不可欠です。そのような研究は、生物多様性と人類の繁栄の基盤を守ることにもつながります。

企業がネイチャーポジティブモデルを選択する必要性


ミツバチをはじめとする受粉媒介者の個体数の減少は、人間や政府だけの問題ではありません。企業にもその解決策を探す責任があります。

例えば、企業は、有害な農法を用いることによって、受粉媒介者の減少に直接的な影響を与えています。また、温室効果ガスの排出によって、間接的にミツバチの生息地を破壊し、気候変動にも影響を及ぼしています。

しかし、単純で利他的な動機以外にも、企業にはこの問題に取り組むべき経済的なメリットがあります。

ミツバチの数が減少すれば農作物の収穫量が減り、農業、食糧の輸送、医療などの分野の企業収益に大きな影響を及ぼします。受粉媒介者の減少は、事業運営上の重大なリスクであり、企業はネイチャーポジティブ(自然を優先する)モデルを選択することで、意思決定に責任を持つ必要があるのです。

ミツバチは世界で最も重要な受粉媒介者のひとつです。ミツバチがいるからこそ、植物が本来の役割を果たし、食料となる作物が育ちます。もし、ミツバチが消滅してしまえば、植物、作物、そして、生態系全体がドミノ崩しのように崩壊するでしょう。

ハチの種の分布を把握することで、自然と人間のシステムにおいて重要な役割を果たすハチの保護に成功する確率を高めることができます。サイ、トラ、パンダとともに、ミツバチを地図上に載せることで、より効率的で効果的に保護する基盤が築かれ、ミツバチや私たちが大きく依存している生態系を守ることができるようになるのです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Marie Quinney, Specialist, Nature Action Agenda, World Economic Forum

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