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2020.12.16

クリーンテックがVC業界に再び注目されつつある訳


一方で、成功した企業もあります。

最も有名なのがあのTeslaですが、他にも同じくElon Musk氏が立ち上げた住宅向け太陽光発電システム事業であるSolar Cityも好調な成果を出し、最終的に19億ドル(約2000億円)で上場しました。

また、スマートホーム・テクノロジーのスタートアップであるNestもGoogleに32億ドル(約3300億円)で買収され、エネルギー効率化ソリューションを公益事業者向けに提供するテック企業であるoPowerも5億5200万ドル(約575億円)でOracleに売却されるなどの成功を収めました。


1995年から2015年のVCによるクリーンテック投資の推移。縦棒は投資額、折れ線は投資案件数(Source: NVCA)

これらの成功事例があるにもかかわらず、ベンチャーキャピタル業界のクリーンテックに対する評価は全体的に低く、単なる「バブル現象」だったとして認識されています。この否定的なセンチメントの根強さは、著名起業家のPeter Thiel氏が著書『Zero To One』でクリーンテック・バブルの説明にまるごと1章を割いていることからも窺えます。

しかし、ここ最近になって、こうしたセンチメントにも変化が現れはじめているようです。

例えば、史上最も成功しているベンチャーキャピタリストの1人であるChris Sacca氏が最近、Lowercarbon Capitalという、その名の通り、脱炭素を目指すVCを設立しました。

著名VCのUnion Square Venturesも、今年の1月にファームの投資テーマを更新し、気候関連の投資を取り入れることを発表しました。「LP投資家に高いリターンを約束した上で、気候変動問題に積極的に取り組む方法が必ずある」と説明し、現在、同社初となる気候テック(climate tech)ファンドの立ち上げに向けて資金を調達中とのことです。

このような変化が起こりはじめている理由として、もちろん気候変動対策への差し迫ったニーズもありますが、「今回は違う」という確信が持てるような条件が揃ってきているのかもしれません。

ここ40年で風力発電と太陽光発電の価格は90%も下落しました。電池・蓄電技術も格段に進歩しています。気候変動に対する問題意識も明らかに高まってきていて、気候変動への取り組みを重要政策として掲げる国が世界中で増えてきています(そして、バイデン政権が始まれば、米国も再びこのトレンドに貢献できるようになるでしょう)。

全体的に、大きな「波」が到来する予感が高まりつつあり、あとは勇気ある起業家たちがその波に乗るだけです。優秀で相性の良いチームと機会が揃えば、きっと私たちにとっても「Coralっぽい」、有望な投資カテゴリーになるでしょう。

P.S. 今回の「波」で1つ興味深い点が、以前のように「クリーンテック」ではなく、「Climate Tech(気候テック)」と呼ばれることのほうが多いことです。もしかすると、前回の波に対する否定的感情を呼び起こすので、呼び方を変えて印象を一新する必要があったのかもしれません。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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