ジェフ・ベソスの給与が8万ドルだということを知っているだろうか。
それも16年間変わらずに。
経営幹部のビジネスクラス出張より「顧客」の望むサービスを追及するベソス。直近の5年で自社株を368%上昇させた男の能力は本誌掲載のトップCEOランキングでいずれの指標においても上位5%以内に入るなどずば抜けており、その飽くなき「顧客第一主義」への情熱は数値にも大きく反映されている。
それに加えもうひとつ彼が重要視するものが定量データとその分析を重んじる企業文化「culture of metrics」だ。
顧客のニーズと客観的なデータという二本の柱を軸に、何が好かれるかと同様に何が嫌われるのかまでをチームで共有し即座にサービスに落とし込んでいく。
独自の複雑なアルゴリズムに基づき奔走するアマゾン社員たちの目まぐるしい日々を想像するのはいたって容易だが、そんななかCEOは落ち着いたまなざしで常に長期的なビジネスモデルを見据えている。
ただ他の企業と違うのは、「予算と納期から想定可能な商品を創る」のではなく「顧客が欲しい商品を具現化する」ことなのである。
たとえそれに時間と金がいくらかかろうと、だ。顧客のフィールドは多岐に渡り、webインフラの巨頭として今やCIAやNASAにサービスを提供するまでに成長させた「アマゾン・ウェブ・サービス」に代表される事業の種は単作という言葉を知らず今も収穫され最安値で出荷される日を待ちわびている。
99.99パーセントの達成率を1万回に一回の失敗率と捉えるCEOが仕掛ける顧客にとって「超理想的なサービス」はどこまで進化するのか。元金融アナリストの「夢」は、世界の消費者全ての「夢」でもあるのだ。