『愛の不時着』から『NiziU』まで 2020年韓国エンタメのヒットが意味するもの

世界で人気を誇る「BLACKPINK」の4人(CBS Photo Archive/Getty Images)


Netflixで世界同時独占配信するエコシステムを確立


世界進出をK-POPだけに終わらせないのが韓国の強さとも言えます。日本では今年、ネットフリックスで配信されたドラマ『愛の不時着』が最も長く総合TOP10(日本)に表示され、今年日本で「最も多い日数総合TOP10入りした作品」の1位だったことがネットフリックスから発表されたところです。

韓国の若き女性起業家と北朝鮮の軍人の美男美女カップルの恋愛物語をベースとしながら、コメディ、アクション、サスペンスの要素も取り入れ、ドラマでも韓国得意の掛け合わせ技がこれまた巧みでした。

さらに、このTOP10には「梨泰院クラス」「サイコだけど大丈夫」などの韓国ドラマが並び、2020年は日本においてネットフリックス上の韓国ドラマの視聴が昨年と比較して6倍以上に成長したことがわかりました。韓国国内で放送されたばかりの最新作をすぐさまネットフリックスで世界同時独占配信するエコシステムを定着させたことがこの数字をつくり出しているのです。

世界各地で韓国ドラマ、映画の勢いが広がり始めていることは、ネットフリックス本国が発表した「What We Watched 2020」が参考になります。2020年の注目の動きとして、外国語作品の伸びを挙げるなかに韓国ドラマも含まれていました。同発表によると、韓国ドラマは昨年と比べて視聴が3倍に増えたそうです。

米国では『キングダムS2』と『ザ・キング:永遠の君主』に人気が集まり、さらにネットフリックスオリジナル映画の韓国作品『#生きている』(韓国)は90カ国でトップ10入りするほどの人気ぶり。ゾンビという世界的に確立されているジャンルで、なおかつ密室劇から始まる新鮮味を加えたストーリーが受けたのでしょう。

冒頭でも触れたように、こうしたK(韓国)コンテンツが世界的に評価されているベースには、アカデミー賞受賞映画『パラサイト』が絶対的な切り札になっていると言い切れます。

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『パラサイト 半地下の家族』はアジア映画初となる作品賞を含む最多4冠を達成した(Handout/Getty Images)

2020年のアカデミー賞で「作品賞」「監督賞」「脚本賞」「国際長編映画賞」の4冠を制覇し、最重要部門である作品賞を外国語映画である『パラサイト』が受賞したことはアカデミー賞が始まって以来初の出来事となり、映画関係者にも世界中の映画ファンにも衝撃を与えました。加えて、カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールも受賞したW受賞作品としても64年ぶりということで、Kコンテンツに対する注目度が急上昇したのです。

韓国の格差社会を描いた『パラサイト』をきっかけに初めてKコンテンツに触れ、韓国に興味を持ったという人が増え、同じタイミングでネットフリックス配信中の韓国ドラマを紹介する米一般紙が増えていく。そんな好循環を生み出しています。
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文=長谷川朋子

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