クラブやライブハウスをデジタルツイン化 配信音楽イベントの新サービス

.

新型コロナウイルス感染拡大の対策を集中的に行う「勝負の3週間」の呼びかけもむなしく、日本の感染者数/死者数はともに増加を続けている。あらゆる業界が感染状況の行方に、そして、それに対する政府や自治体の動向や対応に大きな不安を抱えながら、生き残りのための模索の日々を送っている。

ナイトクラブやライブハウスは、現時点では来年1月までの時短要請の対象外ではあるものの(一部地域を除く)、今年6月に緊急事態宣言が解除されて以降、さまざまな自主規制や業態変更のもとで営業をしてきた店がほとんどだ。

その経済状況は苦しく、今年7月29日〜8月21日に行われた#SaveOurSpaceによる事業者へのアンケートでは、この状況下で運営が続けられる期間について、「3カ月もつかわからない」と答えたのが15%、「半年」が44%、「1年」が31%と、9割の事業者が一年以内の閉店を予想していると答えた結果が出ている。


#SaveOurSpaceによる「全国のライブハウス/ミュージッククラブ(ライブバーやライブカフェ、DJバー等を含む)を運営する事業者の方々へのアンケート 集計結果」 より

集客やブッキングも難しくなったうえ、感染対策のための業務は増加。さまざまなハードルと対峙しながらの現場では、人数制限を設けた入場イベントやオンラインイベント、またはそれら両方を組み合わせたハイブリッド型のイベントが日常風景になろうとしている。

デジタルを駆使した現場の整備が急速に進むなかで、新たな音楽体験を提供するプラットフォームも生まれてきている。2020年12月17日にテスト公演を行う『ve-nu(ヴェニュー)』もその一つで、実在のナイトクラブを綿密にバーチャル化したオンライン空間で音楽イベントを開催、体験できるプロジェクトだ。

常連客が愛着を感じるバーチャル空間


「NEW NORMAL時代のオルタナティブな現場体験」を目指す同サービスがユニークなのは、実在のヴェニュー(店舗)のディテールにこだわり、店内の雰囲気までも再現している点だ。

テスト公演のためにve-nuがバーチャル化を手掛けた最初のクラブは、渋谷で1996年から営業を続ける老舗の「青山蜂」。3階建ての建物のなかにある3つのダンスフロアのうち、今回は2階をバーチャル化した。フロアやバーカウンター、DJブースだけでなく、床の変色具合や扉の錆び方など、店内の質感やにおいといった「空気感」までもが再現されている。


ve-nuのサービスはマイクロソフトのソーシャルVRプラットフォーム「AltspaceVR」を通じて参加できる
次ページ > 「第二のヴェニュー」を目指す

文=三木邦洋

ForbesBrandVoice

人気記事