国連の報告書には、次のように書かれている。「現代の奴隷制の被害者は、推定4030万人にのぼる。うち2490万人は強制労働、1540万人は強制結婚の被害者である。全世界で見ると、1000人につき5.4人の割合で現代の奴隷制の被害者がいる。現代の奴隷のうち、4人に1人は子どもだ。強制労働の被害者2490万人のうち1600万人は、家庭内労働、建設、農業などの民間セクターで搾取されている。強制的な性的搾取の被害者は480万人、国家権力により強制労働させられている人は400万人にのぼる」
金(かね)は、現代の奴隷制、とりわけ強制労働の原動力になっている。奴隷取引は実入りのいいビジネスだ。強制労働の被害者2490万人は、1500億ドル相当の利益に寄与していると見られている。金が強力な動機でありつづけるかぎり、この問題は対処されないまま残されることになるだろう。
奴隷制と闘うためには、ビジネス界が現在よりも重要な役割を果たす必要がある。だが残念ながら、ここ数カ月で多くの企業が、現代の奴隷制に抗する取り組みに関して果たすべき役割を果たしたがらない現状が浮き彫りになっている。
市民社会団体と労働組合の連合である「ウイグル自治区の強制労働を終わらせるための連合(Coalition to End Forced Labor in the Uyghur Region)」は、「アパレルおよびフットウェア業界のほぼ全分野にわたる」多くの企業が、ウイグル人の強制労働に加担していると伝えている。
オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が公開した最新リポートによれば、少なくとも83のグローバルブランドのサプライチェーンを構成する工場において、8万人にのぼるウイグル人が強制労働させられていることを強くうかがわせる根拠があるという。そうしたブランド企業は、サプライチェーンでウイグル人の強制労働を利用していることになる、と同リポートは指摘している。