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実店舗のヘアカラー専門サロン 「カラー・バー」

その後、米国も新型コロナウイルスの脅威に見舞われた。エレットは3月13日にサンフランシスコ本社を閉鎖し、100人の従業員に在宅勤務を命じた。さらに、12のカラー・バーの営業を休止し、新規サロンのオープンも無期限延期とした。

実店舗を閉鎖すると、途端にオンライン販売が急増した。資格をもったプロのヘアカラーリスト30人ではコールセンターも対応しきれなくなり、カラー・バーのカラーリストほぼ全員にコールセンターで働いてもらうことにした。それでも足りず、新たにプロのカラーリスト18人を雇い入れたほどだ。

新型コロナウイルスのパンデミックで売り上げが増加したのはマディソン・リードだけではない。「ニールセン」の調査では、米国のホームヘアカラーの実店舗の年間売上高(2020年7月4日時点)は、前年比6%増の10億6300万ドル、ヘアカラーキットの売り上げはドラッグストアが前年比4.8%増、スーパーや食料雑貨店は45%増。オンラインの売り上げは60%増の3億800万ドルとなった。

それでも、外出自粛で最も恩恵を受けた企業は、おそらくマディソン・リードだろう。すでにデジタルインフラを整備していたし、何より戦略転換が素早かった。新型コロナウイルスの発生当初から状況を注視していたエレットは、サプライチェーンやほかのビジネスの混乱を見極めながら、ほぼ一晩で全従業員を再教育し、別の部署に異動させたのだ。

トゥルー・ベンチャーズのパートナーでマディソン・リードへの投資を主導したジョン・キャラハンは、エレットを高く評価する。

「エイミーは多くのCEOの中で、コロナ禍から従業員や顧客、提携メーカーを守るためのプランや手順を定めることの重要性を最初に認識した1人です」

何度も社会の大きな混乱を乗り越えてきたエレットは、誰よりも危機に対する備えができている。バンカーズ・トラストに10年間在籍後、投資顧問会社「スペクトレム・グループ」のCEOを10年務めたエレットは、投資銀行家やコンサルタントの友人たちの忠告を無視して、2000年に資産運用部門の最高責任者としてオンライン証券会社「Eトレード」に入社した。

だが、ドットコムバブルがはじけ、3000人の解雇を目の当たりにし、01年にEトレードを退職。レズビアン向けのチャータークルーズを企画する旅行会社「オリビア」のCEOやトリニティ・ベンチャーズの客員起業家として活動し、ベンチャーキャピタル「マベロン」にも参加した。

マディソン・リード設立のきっかけは、配偶者であるクレア・アルバネーゼに頼まれて、ヘアカラー剤を買いに行ったことだった。エレットは似たり寄ったりのヘアカラーキットを60箱も買って帰った。中身を見るとどれもわかりにくい説明書、薄手の手袋、刺激性の薬剤。ディスラプション、つまり破壊的イノベーションの余地だらけだった。

まず、友人や知人を通じてヘアカラー習慣についてのリサーチを行った。次に成分を調べ、ドラッグストアブランドの多くには、皮膚炎や呼吸器疾患を引き起こす可能性のある物質や動物実験で発がん性が認められた化学物質が大量に含まれていることがわかった。カスタマーサービスが付いておらず、自力に頼るしかないこともわかった。

文=ヘレン・A・S・ポプキン 写真=ギャビー・ジョーンズ 翻訳=岡本富士子/パラ・アルタ 編集=森 裕子

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