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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介

米国では年間約9500万人もの女性が髪を染めている。そのうち半数が自宅でセルフカラー、約2700万人がヘアサロンに通い、残りは両方を利用している。ところが新型コロナウイルスは、彼女たちにとって必要不可欠なヘアカラーの機会を奪ってしまった。

そこで、オンライン会議でも美しく輝きたい、自分らしくありたいと願う女性の多くが、サロンと同じクオリティのヘアカラー剤を自宅まで届けてくれる「マディソン・リード」に注目している。

3月初めの数週間で、マディソン・リードのカスタマーサービスへの問い合わせは、1日700件から4500件へと激増した。創業者でCEOのエイミー・エレット(59)は即座にオンラインのヘアカラーリストを3倍以上に増員し、週1回のフェイスブックライブシリーズ「カラーリスト・オン・コール」の配信や、新規顧客のために月2回のヘアカラー講座「ハウス・パーティ」の開催、新たなTVコマーシャルなど販路拡大に乗り出した。

投資銀行やベンチャーキャピタルでキャリアを積んできたエレットCEOは言う。

「今回のような前代未聞の事態には、従来の戦略は役に立たないのです」

ハウス・パーティは現在も続いており、マディソン・リードの今年の年商は前年の2倍以上の1億ドル(約105億円)を超え、過去最高となる見込みだ。3月以降、新規顧客数は12倍になったが、その多くがヘアカラーキットに26ドル50セント(定期購入では22ドル)を払ってもいいと考えるヘアサロン利用者である。

ドラッグストアで売られているヘアカラー剤の2倍以上の価格だが、アンモニアなどの刺激物不使用のハイクオリティな製品が自宅に届き、ヘアカラーリストのアドバイスも受けられるとなれば、決して高くない。ヘアサロン再開後も、マディソン・リードの主力製品「レディエント・ヘアカラー・キット」は5秒に1箱売れており、ヘアカラー剤で初の黒字を達成する見通しだ。

マディソン・リードの2020年の事業計画に、当初から「ハウス・パーティ」が入っていたわけではない。19年初めに 「ノーウェスト・ベンチャー・パートナーズ」 や「トゥルー・ベンチャーズ」などのベンチャーキャピタルから5100万ドルの資金を調達し、調達額が累計1億2800万ドルに達すると、同年9月にはヘアカラー専門サロン「カラー・バー」を4年間で600店舗オープンすると発表していた。

従業員も顧客もみんな守る戦略転換


その一方でエレットは、12月には中国の武漢で発生した新型コロナウイルスの拡大状況を注視していた。そして、“その時”が来るとすぐに作戦本部を立ち上げ、緊急対応チームを招集して週末も休まず、毎朝作戦会議を開いた。

1987年の株価大暴落や2000年代初頭のドットコムバブルの崩壊を乗り越えてきたエレットは言う。

「私には、世界の変わり目がわかります。変化はあっという間に起こるのです」

へアカラーキットのボトル、クレンジングシートなどは中国で生産されていたが、1月25日からの工場の春節休業を見越して、すでに大量の発注を済ませていた。心配だったのはむしろ、マディソン・リードのヘアカラー剤の生産拠点となっているイタリアだった。2月初めに、欧州諸国での感染の急拡大が明らかになると、エレットはロンバルディアにある提携メーカーと共に製品の備蓄に奔走した。

文=ヘレン・A・S・ポプキン 写真=ギャビー・ジョーンズ 翻訳=岡本富士子/パラ・アルタ 編集=森 裕子

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