ビジネス

2020.12.23 07:30

ウィズコロナ時代こそ出番。ヘルスサイエンス4つの切り口


積極的にパートナー先を探しつつ、同時に大事なのが、グループ内でのコミュニケーションである。

「ヘルスサイエンスをめぐる個々の事業ストーリーが、社内のどのグループ機能に当てはまるかを検討しながら、さまざまなセクションの人たちの意見を聞いています。オープンイノベーションに関心を持つ人も多いですし、独自技術も含めてリソースは豊富です。ただ、スタートアップのスピード感は、いうまでもなく大企業のそれとは違う。私たちはそれを意識しながら、会社全体のスピードアップのために土台を作っている、ということになります」

発酵技術や微生物管理をはじめとする持ち前の技術シーズを社内ネットワークで探索しながら、最適なマッチングによって外部のスタートアップとの協業を図る。CVCのファイナンシャルな実務については、グローバル・ブレインのサポートを得ながら進めていく。

「社内とスタートアップ、そしてお客様をさまざまなかたちで結びつけ、新しい価値を生み出したい。キリンのヘルスサイエンス領域への取り組みを加速させ、このカテゴリーとそこに関わるスタートアップを盛り上げていくことが目標です」

自前主義から、オープンイノベーションへ。キリンビールは130年を超える歴史の中で培った顧客との接点を、ヘルスサイエンスという新しい領域へのチャレンジで、さらに広げていく。CVCチームは、スタートアップを中心とする新しいパートナーと手を組み、広く社会と繋がっていく。いわば、社会の風をグループ内に呼び込む機能も、期待されているのではないだろうか。


キリンホールディングス◎1907年創業。酒類や清涼飲料の製造販売に加え、医薬事業にも力を入れている。2019年12月期の連結売上高は1兆9413億円。従業員数は約3万1000人。20年3月、グローバル・ブレインと共同で50億円のファンドを組成した。

α TRACKERS◎独立系VCのグローバル・ブレインが2018年12月に設立した、オープンイノベーション推進に積極的な大企業を集めたコミュニティ。日本を代表するCVC運営企業をネットワーク化して各社の活動を支援していく。参画企業はKDDI、三井不動産など35社。Forbes JAPANはメディアパートナーとしてかかわる。

文=間杉俊彦 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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