ビジネス

2020.12.23

ウィズコロナ時代こそ出番。ヘルスサイエンス4つの切り口

CVCチームは現在4名で構成。 リーダーの新谷(中央左)はこの4月に合流。

独立系VCのグローバル・ブレインが、オープンイノベーション推進のために、CVCを運営する大企業を集めたコミュニティ「αTRUCKERS」。今回は、この3月に新たにCVCを立ち上げたキリンホールディングスを取り上げる。同社が推進するヘルスサイエンス事業において、オープンイノベーションはどのような役割を担うのか、担当者に話を聞いた。


キリンホールディングスは、2019年に掲げた長期経営構想において、今後の成長領域として「ヘルスサイエンス事業」を育成することを表明。従来型の酒類、飲料と、グループの医薬品企業である協和キリンなどのリソースを活用した第三極の創造に踏み出した。

この新たな事業戦略のための手法のひとつが、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である。今年3月、グローバル・ブレインと共同で、第1号ファンドを立ち上げた。

CVCチームのリーダーを務める新谷眞介・経営企画部健康事業推進室主査は説明する。

「私たちのメイン・ビジネスはいうまでもなく酒類、飲料の製造販売ですが、グループには医薬品事業もあり、また昨年資本参加したサプリメントを製造販売するファンケルもあります。世界的に見てもユニークなポートフォリオを持つ企業グループであり、これを進化させたいと考えています。そのためには、グループ内のリソースだけではなく、外部のパートナーも求めていきたい。CVCは、そのための有力な手法です」

そのターゲットは先に挙げたヘルスサイエンス領域である。より具体的な投資対象としては、1. ヘルスサイエンスの技術に関わるもの、2. お客様の健康に関するカスタマーエクスペリエンス(CX)向上につながるもの、3. 健康のデータプラットフォーム、4. 顧客のタッチポイントに関わるもの、という4ジャンルに集約される。

CVCチームの津川翔・健康事業推進室主務は、次のように説明する。

「ひと言でいえば、お客様とのつながりの中で“健康”に関わるビジネスを生み出していこう、ということです。その根底にあるのはキリンにとって重要な考え方であるCSV、つまり社会課題の解決によって価値を提供するビジネスの創出です。まずは4つの切り口で、スタートアップと協業を前提にしたパートナーシップを築いていくことを目指します」

社内の技術シーズとのマッチングを目指す


10年で50億円を運用するファンドを立ち上げたものの、滑り出しのタイミングで、新型コロナウイルスの感染拡大という危機が起こった。しかし、投資先の選定とリモート面談、さらにはグループ内での啓発活動と、仕込みは着々と進んでいるという。

「コロナ状況下でも、オンライン診療や免疫関連などヘルスサイエンス領域では伸びている企業が多く、改めて注目を浴びているジャンルです。関連スタートアップは、今後も増えるでしょう」(新谷)
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文=間杉俊彦 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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