クラフトビール会社も例外ではない。いわゆる「宅飲み」が増えているとはいえ、ブルワリーのタップルームやパブでビールを飲む人の数は激減している。米オンラインメディア「デイリー・ビースト」は今年の5月、米国内にある3600ものビール醸造所が年内に廃業する恐れがある、とさえ報じている。
しかし、クラフトビールが直ちに絶滅の危機に瀕する、ということはなさそうだ。5200以上の中小規模クラフトビール会社が加盟する「米ブルワーズ協会(BA)」が発表した中間報告によれば、2020年上半期の生産量こそ前年比10%も減っているが、営業しているビール会社は同時期比737社も増えているという。もっとも、2019年の中間報告では1000社が新たにビール業界に加わったことを考えれば、コロナ禍の傷跡は見て取れる。
水を差された格好とはいえ、10年代は「クラフトビール・ブーム」と呼べるほど、米ビール業界にとって活気ある10年間だった。1873年には4144社あったビール会社が、1933年の禁酒法の制定によりゼロへと落ちている。それがほぼ右肩上がりで増加し、19年の段階では8386社にまで増えている。
確かに現状は厳しく、先行きも不透明だ。それでも、有望なクラフトビール会社や、革新的なマーケティング戦略が出てきているのも事実。ビール業界が泡のように消えることはないだろう。
ノンアルコールビールを作る「アスレチック・ブルワリー」