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地方発イノベーションの秘訣

神戸市役所の副業人材に応募したジェットスターグループの高橋里予

今年10月、神戸市役所の16階にある広報戦略部のオフィスに異様な光景が広がった。あちこちのミーティングテーブルで、職員らがパソコンやタブレットに向かい、ウェブ面接をしていたのだ。

神戸市では、広報業務を担う40人の「副業人材」を公募(募集は9月24日から)。この規模で自治体が、副業として働ける人材を求めたのは初めて。しかも、市役所には出勤せずフルリモートで働けることもあり、全国から1433人からの応募があった。前述のオンラインでの面接を重ねて、37人が選ばれた。

将来の移住や定住にもつながればと


コロナ禍によって在宅勤務やテレワークが広まり、大企業でも社員の副業を解禁する動きも広がり、別の組織で働くハードルは一気に下がった。今回の神戸市役所の副業人材の公募も、その流れに即したものだと言える。

募集したのは、主に広報業務に関するものだが、その内容は、ホームページのモニタリング、SNSや広報紙の記事作成、動画や写真の企画および撮影、広報媒体の作成などで、いずれも市役所に登庁せず、リモートで働けるものばかりだ。神戸市の久元喜造市長は募集開始の記者会見では次のように語った。

「とにかく優秀な人材に来てほしい。これからの行政は業務内容が幅広くなり、内部人材だけで対応できない。専門人材を養成するのも難しい。首都圏などで働く、ノウハウ・経験を持つ人材に神戸市の業務に参画してもらいたい」

また、人材を広く外部に求めることで、広報に「受け手の発想」を取り入れる狙いもあるという。しかも、副業として神戸市に関わってもらうことで、将来の移住や定住にも繋がればと、その効果にも期待を寄せている。

一方で、応募した側は、なぜ自治体で副業をしようと思ったのか、また実際にどのように本業と両立して働いているのか。今回採用されて、神戸市役所で働き始めたばかりの高橋里予に聞いてみた。

高橋は、オーストラリアのメルボルンに本社をおくジェットスターグループのPR責任者。神戸出身の彼女は、地元の関西学院大学を卒業。愛知県の自動車関連メーカー勤務やコンサルタントを経て広告代理店で仕事をしていたが、顧客であったジェットスターグループからヘッドハンティングされた。

ジェットスターグループに入社してからは、化粧品の大手企業とコラボして、現役の客室乗務員が機内でダンスをする奇抜なウェブ動画を企画して話題を集めるなど、多大な活躍をしている。そんななか、コロナ禍によって副業が解禁に。神戸市の自宅で在宅勤務していたときに今回の公募を知り、迷わず申し込んだという。

就航先の自治体といくつもキャンペーンを仕掛けた経験のなる高橋だが、以前から先方の自治体のやり方には疑問を抱いていた。

「もったいない。お金の使い途として」と考えていた彼女によれば、「いまは高コストの広告モデルから脱却し、マイクロインフルエンサーや顧客からの逆発信をうまく誘導して低コストで成果が出せる時代」だという。

ところが自治体は、ノウハウもないまま、巨額なプロモーションを代理店に発注する。「自分ならうまくお金を使える」という気持ちになったことが何度もあったという。

文=多名部重則

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