米国薬物アルコール乱用ジャーナル(American Journal of Drug and Alcohol Abuse)に発表された同研究は、米国の2000人近くを調査したものだ。研究では、回答者の約3分の1が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)中に深酒していると報告しており、深酒をする人のアルコール摂取量は過剰な飲酒をしなかった人の倍以上だったことが示された。研究での深酒の定義は、2時間の飲酒量が男性は5杯以上、女性は4杯以上だ。
同調査によると、パンデミック中に大量の飲酒をした人は1度につき平均で4杯の酒を飲んでいた。深酒をしていなかった人の飲酒量は2杯だ。研究者らはまた、深酒をする確率はロックダウンが1週間継続するごとに19%増えたと補足した。
研究の著者でテキサス大学博士候補者のシタラ・ウィーラクーンは、発表で「自宅で過ごす時間が増えることは飲酒に影響を与える生活のストレス要因で、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりこのストレスが悪化した可能性がある」と述べている。
米シンクタンク、ランド研究所の社会学者マイケル・ポラードは米ABCテレビの取材に対し、これは対処メカニズムでもあると説明した。
「落ち込むようになり、不安が高まると、こうした気持ちに対処するためにアルコールが使用されることが多い。しかし鬱(うつ)と不安は飲酒の結果でもある。対処しようとしている問題を悪化させてしまうこのフィードバックループが問題だ」(ポラード)
この最新の調査には、参加者の大半が白人で高額所得者だったなどいくつか制約があるものの、以前の研究からも同じような傾向が示されている。
英慈善団体アルコール・チェンジUK(Alcohol Change UK)が委託し英国で行われた調査では、ロックダウン中の飲酒量が増えていた人は約5人に1人に上り、15%は1度の飲酒量が増えていると答えた。
伝染病学・地域保険ジャーナル(Journal of Epidemiology and Community Health)に掲載された英国の調査からは、1回の飲酒量が少なくとも週に1度、6杯を超える人は2017~19年は10.8%だったが、ロックダウン中は16.2%まで上昇したことが分かった。飲酒量の上昇は、25歳未満を除く全ての年齢集団で見られた。
英国は深酒をする国民性で有名かもしれないが、米国を含む他の国でも飲酒に関して似たような傾向が見られる。
今年9月に行われ、米国医師会雑誌(JAMA)のオープン・アクセス・ジャーナル「JAMAネットワーク・オープン」に掲載された調査では、2019年と比べてロックダウン中の飲酒量は14%上昇したことが分かった。女性の間では特に、これがほぼ倍になっていた。
研究の著者らは現在、孤立していて危険な酒の飲み方をするかもしれない人のため、新たな治療介入と予防戦略を求めている。研究者らは、こうした対策なしでは健康に長期的な害が生じるかもしれないと警鐘を鳴らしている。また、アルコール依存症を克服した人や現在既に依存症に苦しんでいる人にとっては、これが引き金となる可能性もある。
ウィーラクーンは「健康に悪影響が生じやすいような薬物使用障害の人に向けた最善の治療を確立するため、追加で調査を行うことも必要とされている」と述べた。