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2020.12.24

アマゾン社員はメール処理をこうやって「やめて」いる

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『アマゾンの「すごい会議」』『アマゾンのすごいルール』などの著書でも知られる佐藤将之氏は、アマゾンジャパンの立ち上げメンバーとして2000年7月に入社。サプライチェーン、書籍仕入れ部門を経て、2005年よりオペレーション部門、フルフィルメントセンター(通称:FC)で活躍し、ディレクターとして国内最大級の物流ネットワークの発展に寄与した。

佐藤氏に、アマゾンが大切にしている価値観、そしてそれをベースに「やめていたこと」を寄稿いただいた。

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アマゾンFCが重要視する「5S」


日々膨大な注文をさばき、全国各地のお客様に迅速かつ正確に商品をお届けするアマゾン。そのオペレーションの心臓ともいえるFCでは「5S」が非常に重要とされていた。製造現場で徹底されるべき、整理、整頓、清掃、清潔、躾、である。

そして、5Sにおいてとりわけて重要なのが、整理と整頓だ。

そもそも「整理」と「整頓」はまったく違う。整理とは、要るものと要らないものに分けて、要らないものを捨てること。整頓とは、その要らないものを捨てた後、残ったものをいつでも取り出せるように決められた場所に置くことである。

今回は、私をはじめアマゾン社員が「要らないものを捨てる(整理)」ためにしていたことを、「メール」を例にお話ししようと思う。

アマゾンの心臓部は「メーリングリスト」


その前にまず、アマゾンにおけるメーリングリストの重要性について説明したい。

アマゾンは「情報流通の効率化」を、IT技術の最適活用で実現してきた企業だ。そのアマゾンが創業時から活用しているのが、メーリングリストである。

入社の際、どの部署でも、「Day1」用のドキュメントが新入社員に渡される。そこには、各種オンライントレーニングのリンク、世界のアマゾン社員のなかで「1対1のセッションを申し込んでおくべき人たちの名前とメールアドレス」など、10~20個ほどの、登録すべきメールアドレスのリストが用意されているのだ。もちろん、業務上必要な情報取得のためにほかならない。

アマゾンでは、何か問題が起きた時に、世界のどこかにいる「助けてくれる知見を持ったアマゾニアン」にいかにリーチできるかが、社内での起死回生を決めると言っても過言ではない。まさに、「メーリングリスト登録」はアマゾン社内で生き抜くための命綱なのだ。

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リスト登録のツールにログインし、それらメーリングリストへのサインアップを行うだけで初日が終了、というのもよくある光景である。

推奨される「最低限のリスト」に自分のアドレスを登録したあとも、そこから派生して、業務上外してしまうと致死的な情報が回覧されている他のコミュニティを見つけだし(新しいメーリングリストも時事刻々、生まれている)、自ら登録していく必要がある。
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文=佐藤将之 編集=石井節子

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