オーストリアでは、感染拡大リスクが高い地域の学校に「モバイル検査チーム」を派遣し、迅速検査を行う試験的プログラムの有効性が確認された。そのため12月から、対象地域を国内全域に徐々に拡大している。
米国でも、各地の大学がキャンパス内で迅速検査を実施。高い効果がみられたことから、一部では地元の保健当局と提携し、検査対象をより幅広い地元コミュニティーに広げている。
連邦・州政府の対策は失敗
一方、米国ではいくつものレベルにおいて、対応に失敗してきた。何よりも大きかったのは、迅速検査がパンデミックの抑制に有効であることを、連邦政府の最高レベルが理解できなかったことだ。
政府は今年8月、対策に本腰を入れ始め、1億5000万個の迅速検査キットを購入した。だが、それらを効率的に、理にかなった方法で配布するための戦略を打ち出すことはできなかった。
連邦政府機関と保健当局も同様だ。米国立衛生研究所(NIH)とドナルド・トランプ大統領が打ち出したワクチン開発のための「ワープスピード作戦」に関わった各機関は、ワクチンだけでなく迅速検査も同様に重視すべきだったにもかかわらず、そうすることができなかった。
FDAもまた、低価格で自分で使える迅速検査キットのレビューや承認に十分な力を注ぐことができなかった。そして、連邦議会は救済法案に、迅速検査の費用をカバーする、または価格を抑制するための方策を盛り込むことができなかった。
安価な迅速検査キットを大量に調達したとしても、米経済が今後、パンデミックによって受けるとされる数兆ドル規模の打撃に比べれば、わずかな程度で済んでいただろう。
適切な資金と国としての強力な戦略があれば、感染者数と死者数の急激な増加は、迅速検査によって食い止められるかもしれない。