保留になっていたテレビ番組製作や移動手段の提供、ホテルや豪華施設への進出、ビジネス出張向けサービスといった事業拡大計画も、IPOにより資金が確保された。トンネルの最後には光があると考えたブライアン・チェスキーの信念と、前例のない世界的危機の中でもIPOに向けて資金調達をした判断が報われたのだ。
倹約と苦難の連続だった同社は今や、市場の花形となった。IPOの順調な滑り出しは、時宜を得たものだったかもしれない。新型コロナウイルスワクチンの早期投入の発表や、観光業界変革の見通し、他の宿泊客とスペースを共有する大型ホテルよりも家族や友人だけで過ごせる小規模施設を好む旅行者の増加、体験ツーリズムといったトレンドが追い風となった可能性がある。
エアビーアンドビーは、参加者の多くを満足させられるプロジェクト(ホストは保有施設からより多くの収入を得られ、宿泊客は普通とは異なる体験を得られる。多くの人が、エアビーの価値は価格だけではないと指摘している)を生み出し、状況の変化に合わせて規則を進化させてきた。もちろん、一定の規模があるサービスは予想しづらい副作用を生むものだ。
同社の上場が大成功に終わった今、同社の活動により「都市テーマパーク化」が進んだ多くの都市の中心部で長期的な住宅賃貸を復活させるためには自制あるいは規制が必要となるだろう。エアビーアンドビーの創業者らはこの週末、安眠できただろうが、同社が今後、効率的で柔軟なモデルを確立する上ではこの点が鍵となる。