しかしふたを開けてみれば、初値は112%高い146ドルで、株価は同日中に151ドルに到達。ブルームバーグのインタビュー中にこの上昇幅を知らされたブライアン・チェスキー最高経営責任者(CEO)は言葉を失った。株価は11日、139ドル余りの終値でその週の取引を終了。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による先行きの不透明感や苦難にもかかわらずIPOを延期しないとした創業者らの決定が報われたようだ。
同社はIPOに向けて、その企業文化を反映したマーケティングイベントを多く実施した。その一つが、ニューヨークのタイムズスクエアで電光掲示板を借りて流したコマーシャルで、証券取引所のオープニングベルになぞらえて、エアビーのホストたちが自分たちのレンタル物件でベルを鳴らす様子を放映した。またナスダックの画面ではグレタ・トゥンベリの「未来のための金曜日」運動に放映スペースを寄付した。
エアビーのインキュベーターである米スタートアップ育成機関Yコンビネータ(Y Combinator)の共同創業者ポール・グラムは、エアビー創業者らを紹介する記事を執筆し、その不屈の精神と努力をたたえた。同社の成功は一晩のうちに起きたものではなく、過去12年間の努力に基づくものであり、同社は起業家精神にあふれた文化を構築し、ここ半年で破綻する恐れも出ていた事業を成長させ、強化してきた。
パンデミックが始まった頃、同社は予約のキャンセル補償として10億ドル(約1040億円)以上を支出し、従業員の25%に当たる約1900人を解雇しなければならなかった。しかし今では、同社は時価総額で業界最大規模の企業となった。
同社の時価総額は830億ドル(約8兆6000億円)で、マリオット(420億ドル)やヒルトン(290億ドル)などのホテルチェーン、デルタ航空(300億ドル)などの航空会社、エクスペディア(180億ドル)などの予約サイト運営企業を優に超えおり、さらには10日朝には数時間にわたり巨大企業のブッキング・ドットコム(863億ドル)さえも超えた。