──ステークホルダー資本主義とグレート・リセットという環境下で、企業の役割はどのように変わるのでしょう? 経営者はどうですか。
ハウエル:私たちが公衆衛生と経済の難題に対処せねばならないのは明らかだ。政府は医療面で効率的に行動すべく国民の信頼を確保すべきで、民間セクターは政府と協働し、経済面のリスクを軽減すべきだ。ステークホルダー資本主義への取り組みを強める企業が増えている。
今年ダボスで開かれたWEF分科会「国際ビジネス評議会」では、世界の大企業140社が結束し、共通の指標の設定を目指すことで合意した。その指標を使えば、民間セクターが「環境・社会・ガバナンス」(ESG)に基づいた目標に向け、どれだけ前進しているかを測ることができる。
──シュワブ氏によれば、資本主義は創造性やイノベーション力に取って代わられ、「才能主義(タレンティズム)」が新たな資本主義になると。才能主義が重要さを増している理由は?
ハウエル:第1〜3次産業革命では、「資本」が成功の最重要要因だった。一方、第4次産業革命では、イノベーションと多様な才能の集まりが求められる。しかし、教育と才能をひとくくりにしないことが重要だ。第4次産業革命がもたらす変化には適応策が必要であり、技術的に解決できないからだ。教育は、問題の定義づけなどが明確な、技術で解決できる変化には有効だ。
一方、適応策が必要な変化には、斬新な解決策や新たな学びが求められ、それは批判的思考や協働、創造性などの「才能」にかかっている。政府や企業のリーダー、教育機関、個人は、現在進行中の変化の本質を理解すべきだ。学びや働くことの意味を見直し、人々が可能性を生かすにはステークホルダー(利害関係者)がどのような役割を果たすべきか、再考する必要がある。
リー・ハウエル◎世界経済フォーラム取締役。法学修士号、スイス・ザンクトガレン大学で博士号取得。2001年、WEF年次総会プログラム責任者。04年、アジア担当上級責任者。09年から現職。