ビジネス

2020.12.17

いまが成功と失敗の「分岐点」。日本は自己組織化モデルを目指せ!


スケールする上で不可欠なのがデジタル・トランスフォーメーション(DX)です。日本のデジタルを阻害している原因の一つが「匠」に頼りすぎること。人がうまくこなしてしまうので、デジタルに置き換えにくい。

「仕組み」にできることはどんどん仕組み化し、匠はさらにその先へと深めていく。それを両方進めるのです。日本の強みはフィジカルのリアルな現場にあります。デジタルとリアルをハイブリッドにできれば日本なりの強い経営モデルができるでしょう。

実は存在感は希薄でも長寿の中小企業は多い。自己修正力があれば、生き残れる。しかし、生き残ることと高い志で世の中を変えることとは違います。結局、「何のために変革をするのか」がすごく大事なのです。単に生き残るだけの変革でいいのか。

そこに志はあるのか。自己修正を繰り返して生き残っても、自分の軸がなければ世の中は変えられません。世界には多くの課題や困難が山積みです。それらを解決するという志をもたずに、成長しない、守るだけの経営では没落していくだけです。

日本の企業の強さは、それぞれの高い志や尖った思いだと思います。欧米企業が掲げるESGやSDGsなどの理念は客観的で理性に訴えるものです。誰も反対しませんが響かない(客観正義)。それに対して日本の企業のいいケースを見ていると、こだわりが強い。服で世界を変えようとするユニクロの「ライフウエア」や、花王の「キレイライフスタイル」など、「ならでは」の志がこもっていて「ワクワク」させるものがあります(主観正義)。

いまはまだ世界標準にはなっていないものの、うまくいけば世界中で強い共感が得られると思います。高い志をもって世界にインパクトを与えられれば、日本が世界に誇れる次世代の変革モデルを示せるでしょう。


名和高司◎1957年生まれ。一橋大学ビジネススクール国際企業戦略専攻客員教授。東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクール修士。三菱商事、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2010年6月より現職。近著に『経営改革大全企業を壊す100の誤解』(日本経済新聞出版社)、『企業変革の教科書』(東洋経済新報社)など。

構成=成相通子 イラストレーション=ヴェロニカ・チェリ

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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