ビジネス

2020.12.17

いまが成功と失敗の「分岐点」。日本は自己組織化モデルを目指せ!


このような理由で、前述の3つの欧米型モデルは、日本企業にはあまり適していないというのが私の結論です。そこでお薦めしたいのが「メビウス運動」モデル。これは「自己組織化モデル」で、自分を信じればできる日本流の自発的に変化できるモデルです(図表2)。



まずは、(1)顧客現場で変化する市場の現場をしっかり押さえることから始まります。その次は(2)組織DNAで、自分たちの最も強い資産をどう生かせるかを考えます。そうして、客の思いと自分の強みを重ねることで、左上の(3)顧客洞察が生まれます。自分が提供できる新しい価値を発見し再定義します。

日本企業が苦手なのはその次の(4)成長エンジンです。ここで、規模を大きくできる(スケールできる)ビジネルモデルをしっかりつくり込む。日本企業は(5)事業現場にすぐにもって行きがちですが、そうすると規模を大きくすることができません。事業モデルをつくり込んでから、事業現場にもって行く。事業現場では、デリバリーを通じて顧客の反応を見て、最初の(1)顧客現場につなげます。

観察を重視する帰納的なモデルで、「現場」重視という姿勢は日本の実践的な企業にあっているでしょう。ただしここでいう現場は、日本企業が得意な事業現場ではなく、「顧客現場」であることに留意する必要があります。

大切なのは、自分たちの資産を他人のものとどううまく編集するかという知恵です。それをやるためにはまず(2)の組織DNA、自分の強みをひもとくことが不可欠です。

自分たちの本当に重要な資産は何か。これは、バランスシートに載っている物理的な有形資産ではなく、ブランドや知恵、人材やネットワークといった無形資産です。そうした強みを暗黙知ではなくて、明示的にして形式知化した型へと磨く。人間の力に頼った「たくみ(匠)」ではなく、「しくみ(仕組み)」にするのです。

トヨタ生産方式(TPS)やセブンイレブンが開発したコンビニのフランチャイズモデル、星野リゾートの「おもてなし」モデルがまさにそうで、そこまでの仕組みができれば、メビウス運動モデルの成長エンジンになります。
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構成=成相通子 イラストレーション=ヴェロニカ・チェリ

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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