年末年始は「スタンフォード式」運動で、疲れた脳にご褒美

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これを現代のアメリカ人で見てみると、中~高強度の運動時間は、平均的な成人だと1日10分未満となり、活動量のピークは6歳のため、その差は歴然であることがわかる。また、同年代のアメリカ人と比較すると、血圧、コレステロール、トリグリセリドの数値が低く、心臓発作をまねく血液の炎症反応の指標であるC反応性蛋白の数値も低いことが判明した。

先進国で蔓延する心臓病がハヅァ族にまったく見られなかったのも特徴的な結果だ。また、二大現代病とも言われる、不安症・うつ病の症状もハヅァ族に見られなかった。

継続的な運動からは多幸感という「報酬」も


人体は、自然選択により走りやすいように変化してきた過去がある。ヒトの大臀筋が進化の過程で大きくなったのもそのせいだ。ハヅァ族をはじめ、人間はなぜ運動することや走ることを肯定的に捉えてきたのだろう。

「ランナーズハイ」という言葉がある。継続的な運動により引き起こされる一時的な多幸感であり、喜び、深い満足感、高揚感、ウェルビーイングといったポジティブ感情を経験する状態である。われわれは持久力を発揮することで、報酬が得られるのかもしれない。

ランナーズハイは、脳内で機能する神経伝達物質のひとつであり、「報酬系」に多く分布されるエンドルフィン作用によると推測され、高強度運動はエンドルフィンの分泌を引き起こすことが研究から明らかになっていた。

南カリフォルニア大学生物科学教授のデビッド・A・ライクレンは、大麻やマリファナのように苦痛を緩和し、気分を向上させる効果をもつ、脳内化学物質である「内因性カンナビノイド」に着目。心配事やストレスが消え、苦痛が和らぎ、時間の流れが緩やかになり、感覚が鋭敏になるなど、運動によって生じる高揚感と大麻の効果が近いからだ。

ウォーキング、ジョギング、全速力で走る、をそれぞれ30分間で測定したところ、内因性カンナビノイドが上昇したのはジョギングのみだった。しかも、血中濃度は3倍にも上昇し、参加者たちは総じて、ハイな気分になったと報告したのだ。200万年前の狩猟採集活動と同程度の運動をした際に、脳は私たちに報酬を与えるとライクレンは発表した。ただ走ることではなく、持久力を発揮することで、われわれはランナーズハイが得られるのだ。

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文=上沼 祐樹 編集=石井節子

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