「効果95%」のファイザー製ワクチン争奪戦 米国は離脱か、日本はどうする?

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英国が12月2日、ファイザー/バイオエヌテック製新型コロナワクチンの使用を世界初承認したのに続き、11日には米食品医薬品局(FDA)も同新型コロナワクチンの緊急使用を許可した。

まさに同ワクチンはその開発スピードと効能で世界の競合から一等地を抜いた存在だ。今後も本ワクチンが主流となるかどうかは今後の他社の開発状況しだいではあるが、各国による同ワクチン争奪戦が今後熾烈化するのは必至だ。

しかし、英ガーディアン紙ほか海外メディアによると、米国は数カ月前にこのワクチンの追加注文の機会を同社から与えられたにもかかわらず、「自ら逃していた」というのだ。情報ソースは「匿名」という。

「他国への供給後」の再供給を待つしかない


複数の海外メディアが報じるところによれば、米国政府は7月、そしておそらく10月にファイザーから持ちかけられた「追加1億(あるいは2億)回分の確保オファー」を断っていた。

米国は、「効果が95%で副作用がない」というこの優秀なワクチンの全国民分確保に通じる道を自ら断ったことになり、すでに確保している1億万回分以外は「他国への供給が終わった後」の再供給を待たねばならない形になる。

米疾病予防管理センター(CDC)は、医療従事者など保険分野で働く2100万人と、長期型の介護施設に入居している高齢者300万人を優先するとしており、この優先分に関してはすでに確保した分量でまかなえる計算ではある。が、米国の総人口はおよそ3.3億人だ。そして、ファイザー製ワクチンは2回接種が必須なのだ。

ワクチンメーカーを併走させて担保、だが──


たとえばニューヨークタイムズ誌がポッドキャスト配信する番組「The Daily」12月10日配信分によると、米国政府はまずこの3月、3つの異なった技術を選び、各々の技術につき2社を競合させるべくピックアップした、という。つまり米国はこの6社(米国政府は6頭の「馬」と呼ぶ)を併走させ、なりゆきを見ようとしたのだ。

なお3月時点でのファイザーと米国政府との契約は、「ファイザーは、米国政府に2021年3月までに1億分を単価19ドル50セントで確保すること、ただし実際の接種が始まり、FDAが認可するまでファイザーへの支払いはなし」という、米国政府に非常に有利なものだった。だが、同社が他の5社のように政府から開発費用、いわば「前金」を受け取らなかったのは、米国政府に監視されることで開発スピードが遅れるのを恐れたためとも思われる。
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文=石井節子

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