OCHAを率いる人道問題担当国連事務次長のマーク・ローコック(Mark Lowcock)によると、2021年に人道支援を必要とする人は、2020年と比べて40%増え、2億3500万人という記録的な数に上るという。
こうした急増は、「ひとえに新型コロナウイルス感染症が要因」であり、すでに発生していた紛争や難民、気候変動による危機を深刻化させているとローコックは述べた。また、今後は複数回にわたって飢餓が起きる可能性があると警鐘を鳴らしている。
こうした危機的状況に国連やその他の機関は「圧倒されている」とローコックは述べ、世界各国の政府に対して、自国の新型コロナウイルス救済策の予算のごく一部だけでも拠出し、最貧国の人々が取り残されないようにしてほしいと訴えた。
ローコックによると、350億ドルあれば、最も恵まれない1億6000万人の人々が教育や食料、医療にアクセスできるようになるという。残りについては、赤十字などほかの機関が支援する見込みだ。
しかし、たとえ財政支援が得られたとしても、2021年は過酷な年になる可能性があるとローコックは指摘。大規模な飢餓を引き起こさずにその1年間を乗り切ることができれば「大きな達成」になると述べた。
ローコックは、2021年に世界が団結して最も恵まれない人々を支援しなければ、これまでの何十年にもおよぶ取り組みの成果が損なわれると強く呼びかけた。「正しい選択ができるのは今回限りであり、セカンドチャンスはない」
英国政府は2020年11月、対外援助予算の削減を決定した。それを受けて、英国外務省の海外領土及び持続可能な開発担当政務次官バロネス・サグ(Baroness Sugg)は抗議のために辞職した。英国政府によるこの決定についてローコックは、世界における同国の評判を損なう「遺憾な」ものだと述べた。また、今回の予算削減は英国にとっては少額でしかないが、世界の最貧国を苦しめることになると指摘した。