当初はIPOを延期する予定だった
C3のIPOは、景気がシーベルの予想を上回るペースで回復している証拠だ。シーベルは今年春の取材で次のように話していた。「景気回復は2021か2022年になるだろう。その頃には、我々は非常に強い会社になっており、IPOを目指せるようになると考えている」
リモートワークの広まりを受けて、C3のソフトウェアツールに対する需要は増大した。その結果、同社は資金を調達する必要に迫られた。そして、私募による増資やSPAC(特別買収目的会社)との合併による上場など、あらゆる手段を検討した結果、伝統的なIPOを選んだという。
「伝統的なIPOは最も実績が多く、長期的なメリットが一番大きいと判断した。成長を実現する上で、最適な方法だと考えている」とシーベルは話す。2020年のIPOは時期尚早だとした自身のかつての発言については、「当時は世界の終わりだと思えたが、私は間違っていた」と述べた。
今年の12月は過去最大のIPOラッシュとなったが、エアビーアンドビーやドアダッシュに比べると、C3のIPOは比較的地味だったと言える。C3の上場時の評価額は約40億ドルとされたが、ピッチブックのデータによると同社は2019年9月の調達ラウンドで33億ドルと評価されており、そこからさほど増えていない。これには、2020年の売上高成長率が直近事業年度に比べて低かったことや、顧客3社で売上高の40%を占める点が影響していると思われる。
しかし、シーベルのこれまでの実績を見れば、同社の長期的な成長ポテンシャルが高いことは明らかだ。取引開始直後の株価の急騰からも、投資家が同社を高く評価していることがわかる。
「今回のIPOは、世界をリードするソフトウェア企業を築く上でのマイルストーンの1つだ。AIは一過性のものではなく、非常にパワフルなツールだ。その先駆者であることを、大きな栄誉だと考えている」とシーベルは話す。
現在68歳のシーベルは、今後も引退する考えはないようだ。「私は、C3.ai の仕事が好きでやっているのだ」と彼は語った。