ビジネス

2020.12.22

デザイナー出身の経営者が少ない日米差は、営業職の価値にある?

米国の名だたる企業の経営者にデザイナー出身者は多い。


日本企業におけるデザイナーの役割って何?


ここからが本題。そんな世界の潮流の中で、ではなぜ日本の企業の経営陣にデザイナー出身者があまりいないのか?

そもそも日本企業の従業員で「デザイナー」という肩書を持つスタッフ自体が驚くほど少ない気がする。では、日本企業におけるデザイナーの役割とは、一体何なのだろうか?

おそらくその仕事は、“プロダクト制作における最終工程の装飾や、ブランディングにおけるビジュアルデザインの一部にとどまっている”ケースが少なくない。

とある日本の会社では、企画会議に出席したデザイナーに対して「なぜあなたが参加してるのですか?」と言われたという。そうなってくると、どうしてもプロダクトが提供するユーザー体験の質は下がるし、ブランド資産も積み上がりにくくなってくるだろう。

なぜ日本ではデザイナー出身の経営者が少ないのか?


従業員にデザイナーが少なく、その役割も限定的なのであれば、経営陣にデザインがわかる人が少ないのもうなずける。しかし、デザインがビジネスにとても重要な時代に日本企業の経営陣にデザイナー出身者が極端に少ない場合、企業としての競争力は極端に下がってしまう。

それなのに、日本企業の経営陣にデザインバックグラウンドを持っている人はかなり少ない。

それはなぜなのか?

この答えは、「日本は経営において営業がとても重要である」からだ。

日本では営業力が企業にとってとても重要な役割を果たす。下手をするとプロダクトの質以上に。自ずと営業畑出身の人間が経営者や取締役などに出世しやすい。特に経営者が創業者ではない企業はこの傾向が顕著だ。

理由は、以前に一緒に登壇したTakramの田川さんも、Goodpatchの土屋くんも、今回登壇したNOSIGNERの太刀川さんも、AIR Designの中平さんも一様に同意していただいた。

営業はデザインより強いのか?

めっちゃ使いにくいプロダクトのなのに何故か売れている。その理由は営業力にあったりする。最近ではメルカリのようにエンジニア出身の人が経営をしている会社も増えているが、デザイナー出身者はまだまだ少ないだろう。

結果として日本の多くの優秀なデザイナー達は、自分たちのフィールドだけにとどまり、ウンチクを語る日々を過ごしている。

日本と海外でなぜこんなにも違うのか?


では逆に、アメリカをはじめとした海外ではデザイナー出身の経営者が多いのか?おそらくその秘密は、国土の広さにあると思われる。アメリカと日本の国土の違いをおさらいしてみよう。

ざっとこんな感じである。

米国に日本を重ねた地図

アメリカの国土は日本の約26倍だ。

ニューヨークからサンフランシスコまでは飛行機で片道6時間。3時間の時差がある。近そうに思えるロサンゼルスからサンフランシスコまでも飛行機で1時間以上かかる。サンフランシスコ – シリコンバレー間だって、車で1時間以上かかる。

これはどういうことかというと、“簡単に足で稼ぐ営業ができない”ということ。では、どのようにして顧客やユーザーを集めれば良いのか?

そう。“プロダクトの質、ブランド力、マーケティングにフォーカスするしかない”。

セールスは必要ない

足を使った営業力に頼れない分、他の方法でユーザーを集めてくるしかないのだ。

だから自ずとプロダクトの質が上がり、重要な差別化要素であるデザインおよびデザイナーの役割も上がる。結果として、デザインバックグラウンドを持つ人材の重要性が高まり、経営陣にもどんどん採用される…という感じ。

特に短時間で急成長が求められるスタートアップに関しては、一気にユーザーを集めなければならないのだ。営業に頼っている場合ではない。

と、いうこともありスタートアップ界隈の人たちはスーツを着る機会がほとんどない
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文=Brandon K. Hill(CEO of btrax inc.)

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