ライフスタイル

2020.12.12 11:30

メニューのない人気店 大阪のシェフが実践する本気の「循環型レストラン」


まだ始まったばかりのミシュランのグリーンスター認定だが、毎年顔ぶれが同じでは新しい店の励みにならない。次々とグリーンシェフが生まれる土壌はどのように作って行くべきだろうか。

食材の流通の仕組みや、ごみの分別や焼却の仕組みが都市全体で確立している場所において、レストラン単体で大きな変革を目指しても限界を感じてしまうかもしれない。

かと言って「プラスチックのストローをやめました」「店内にリサイクルの家具や食器を使っています」というようなエコ施策をする「なんとなくグリーン」な店がブーム的にな増えることは本質的な解決策にならない。廃棄食糧大国の日本において、まずは食材の循環こそが取り組むべき本命の課題だろう。

食材がどのように育てられ、どこから来たのかを知り、環境負荷のない食材を選ぶというシェフの目利きは今後ますます重要になることは間違いない。「サステナブル認証」をとった食材でも、遠距離から輸送・輸入していれば「脱炭素」という視点でその意味が薄れてしまうように、グリーンであることの本質をホリスティックな視点で捉えるリテラシーが必要になってくる。

グリーンスター
イタリア版 グリーンスター。設立当初から挙がっている疑問の声とは?

実は、グリーンスター設立当初からある波紋が広がっている。「レストランのサステナビリティをどのような基準で測っていくのか不明瞭だ」と疑問の声が挙がっているのだ。

食材のトレーサビリティや廃棄の実態、従業員の労働条件や地域への貢献度などは顧客の目にはさらされないため、レストランの裏側の仕組みを知る必要がある。このような尺度で信頼性の高い評価するには、ミシュランの既存の「覆面調査員」の仕組みのみで調べるのは無理があるという指摘だ。

本当にグリーンかどうかの評価は、食材や廃棄など部分的な解決策を見るだけではなく、レストランを取り巻く全ての関わりの連鎖を見る必要がある。また、食材の生産者の良し悪しのみならず、その自然環境の生態系が健全であるかどうかまで含めねばならない。その上で、地に足のついた地域ごとの「最適解」を考え抜いた実践が求められるのだから、画一的な審査が難しいことはうなずける。

これはレストランに限ったことではない。「グリーンキャピタリズム」という経済と環境の両輪という考えは歓迎すべきことだが、一見すると「エコロジカル・エシカル・サステナブル」な取り組みの裏側に「経済至上主義・大量生産・大量消費型」という経済発展モデルが潜んでいることが指摘されている。私たちは環境に良いと言われるものを鵜呑みにせず、その裏側までしっかりと見極めるリテラシーを身につけないと、グリーンというトレンドをまた消費することになってしまうだろう。

循環経済の鉄則は、新たに何も作らず、いままで以上の消費・過剰を生まずに発展する世界的なシフトだ。そのために新時代の料理人は、いまあるものを軽やかに受け入れるキャパシティー、それを楽しさや美味しさに昇華するクリエイティビティ、そして世界をよくしたいというまっすぐなパッションで地域とつながっていくことが求められる。

funachefのように、料理人の創造性や寛容性をドライバーにした本質的な循環型グリーンレストランのモデルが、日本から広がっていくことにぜひ期待したい。

連載:イタリア発「サステナブルな衣食住遊イノベーション」
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文=齋藤由佳子 写真=funachef提供

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