エディター、ライター

VAN CLEEF & ARPELS Cadenas

ジュエリー・時計ジャーナリストの本間恵子さんが、ヴァン クリーフ&アーペルの「カデナ」を語る。


「ジュエリー出身なので、ジュエリー視点でしか時計を選ばない」という本間さんが、この取材のためにご自身のコレクションのなかから選択してくれたのが、ヴァン クリーフ&アーペルの「カデナ」。

「ヴァン クリーフ&アーペルは3本持っています。この時計は2年前に入手した、型番としては少し古いものです。オリジナルはチェーンブレスですが、2000年代にストラップのモデルを出しています。現在は、チェーン、ストラップ、ともにありますが」

「カデナ」の誕生は1935年。ウィンザー公爵、またはウィンザー公爵夫人がそのコンセプトを提案したともいわれている。

ブレスレットのように見える2本のスネークチェーン、ケースのラインは直線。アタッチメントが南京錠の形をしているという独特のもの。“カデナ”とは、フランス語で南京錠のことなので、アタッチメントがこの時計のポイントであることは間違いなさそうだ。

「当時は南京錠のデザインがはやっていて、いろんなブランドがそういったものをうくっていましたが、現在もあるのはヴァンクリーフ&アーペルくらいです。南京錠みたいなものを女性の手首にはめるのが意味深で素敵、みたいな時代だったらしいですよ」

「カデナ」はまさにブレスレットのようで、「全然時計っぽく見えない」デザインになっている。20世紀初頭は女性が公の場で時計を着用し、時刻を確認することは“はしたない”と考えられていたようだが、本間さん自身は着けていて別の効用を見いだしている。

「クルマを運転しているとき、この角度は見やすいんですよ。カデナが誕生した時代は、クルマ社会になりつつあったころでもあるんです」

そしてコロナ禍に陥った現在、本間さんはこの「カデナ」をかなりの頻度で使用しているという。

「いまは頻繁に手洗いやアルコール消毒をするので、宝石の入った指輪は石が痛んでしまい、あまり着けられないんですよ。代わりにこういった大きな、ブレスレットのような腕時計の出番が増えてきました」

けがの功名のようではあるが、これは新しい発見でもある。「ほぼブレスレット。たまたま時計がついているみたいな感じ」という容姿は、これまでは実用性には乏しいと思われがちだったが、逆に一石二鳥の効果があることがわかった。さらに時計部分の動力がクォーツということも実用的だ。

もちろん、以前のように指輪をするようになっても、その美しさ、効果に、まったく変わりはないのである。

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こちらは、アリゲーターストラップ・ バージョン。ブレスレットタイプもあり、 それぞれ違った趣がある。

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南京錠 をモチーフにしたアタッチメントのデ ザインは、普遍的で美しい。この象 徴的な曲線と、ダイヤル等で見られ る直線との融合が、このモデルのエ レガンスを際立たせている。

VAN CLEEF & ARPELS Cadenas
ムーブメント|クオーツ
ケース素材|18Kイエローゴールド
ケース径|14 x 26mm
価 格|217万2000円
問い合わせ|ヴァン クリーフ&アーペル 0120-10-1906


本間恵子◎ジュエリー・時計ジャーナリスト。ジュエリーデザイナーを経て、宝飾専門誌で時計関連の記事を担当した後にフリーになり、ジュネーブ、バーゼルの時計フェアの取材を開始。

text by Ryoji Fukutome|illustration by Adam Cruft|edit by Tsuzumi Aoyama

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