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2020.12.11 19:15

世界が注目、アートとカルチャーの聖地「KOMIYAMA TOKYO」誕生秘話

小宮山書店三代目の小宮山慶太代表


近年は海外のフェアにも年8回〜10回ほど出展しています。パリからTGVで3時間ほどのところにある、アルルフォトフェアにも夏に出向いています。その時期は来場客でごった返し、街中が写真展会場になり、教会などにも有名フォトグラファーの作品が展示されています。パリやロンドンのお客様ともその場で交流できる素晴らしいフェアです。飛行機代や旅費を考えればビジネス的には大した利益は無いのですが。
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ヨーロッパの人達は都市でのフェアだけでなく、田舎町のフェアにも参加している苦労を感じてくれたのか、東洋人の私を仲間として迎えてくれるようになりました。そんな場所でコミュニケーションをとることが重要なんだと分かってきました。


現地で日本の文化を紹介し、海外文化を吸収する。そんなことを繰り返しているうちに世界中のコレクターやファッショニスタ、デザイナーたちが「東京に行くならKOMIYAMA TOKYOを訪ねるべきだ」と言ってくれるようになり、来日時に立ち寄っていただけるようになってきました。


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国内外の文化とアートを繋げたいと「アートフェア東京」に出展したり、渋谷パルコで小宮山書店の「蔵出し」展として国内外のアート作品や写真家の写真集、ポスター、雑誌などを展示したりしてきました。

全てがデジタルにはならない。選んでモノを買う時代に


──小宮山さんは紙の写真集やポスターなどの印刷物をたくさん扱っていらっしゃいますが、紙の本が売れないと言われる中、アートやカルチャーの世界でもデジタルが席巻してきています。これから残っていくものって一体どんなものなのでしょうか。

難しいところですね。最新の情報が求められるものはすぐにデジタルに取って代わられてしまうかもしれない。それでも、全てがスマートウォッチになってしまうかというとそうはなっていなくて、実際はアナログの時計が残っていますよね。全員がスマートウォッチを使うようにはならない。

人間はアナログな生き物ですから、全部デジタルで済ませられない何かがあるんだと思います。全ての食事がサプリで満足できますか? 美味しいものを食べたり飲んだりしたいですよね。テレワークだけで全ての仕事が成り立つわけじゃない。

美しい作品や書籍を手に持って、絵具や紙の匂いを感じるのが楽しいし贅沢なことになると思う。大量生産、大量消費時代になって久しいですが、今後はもっとモノを選んで買いに行く時代になっていくと思います。海外ではヴィンテージの写真集に何百万円も出す方もいます。

だから小田さんの写真集もオーダーしたんですよ。テーマ性もあって、しっかりした写真集を真剣に作った印象がありました。持って触った時に表紙の銀箔が艶やかで、これまで見てきた印刷の感じと全く違ったんですよね。そういう作者の思いの強さが感じ取れるのがいいですね。私のところに売り込みはたくさん来ますが、グッとくる本は実際なかなか少ないです。



写真は記録するという意味でもすごく重要なメディアです。震災など大きな出来事があれば、写真家は撮りますよね。今回小田さんが緊急事態宣言下を撮ったということの意義や、作品への見方は今後どうなるか。まさに今コロナ禍にあるので、現時点での評価はなかなか定まらないと思いますが、10年後、20年後に真価が出てくるのではないかと思います。

紙の本をしっかり作ろうとするとすごく大変です。私自身写真集を出版していますが、古書店で10年後や20年後にちゃんと価値がついている本を作っていきたいです。時代の流れに揉まれながらも、この本はコンセプトや装丁がいいから置いておこうとか、値段をしっかりつけよう、という本を作りたいと思うし、そういう作品を扱いたいです。
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聞き手、写真=小田駿一 構成=林亜季

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